ステレオサウンドについて(その107)
ステレオサウンド 59号で紹介されている新製品の中で、
瀬川先生はアキュフェーズのパワーアンプM100とルボックスのカセットデッキB710を担当されている。
M100は出力500Wでモノーラル仕様。
58号の新製品紹介でマッキントッシュのMC2500が登場したところだから、
二号続けての500W級のパワーアンプの新製品である。
カラーの4ページで紹介されている。
このアンプの試聴記の後半は、
瀬川先生が中目黒のマンションで、4345をM100で鳴らされていたのを知って読み返すと、
時代の音の変化とともに、瀬川先生が求められる音も変化していることを感じ取れるはずだ。
文章のボリュウムとしてはM100が多いが、
私が、瀬川先生ならではだ、と感じたのは、
モノクロ1ページのルボックスのB710の記事のほうである。
5000字近いM100の文章と、
1000字に満たないB710の文章。
B710の文章は、俯瞰の視点からのもので、B710のことというよりも、
国産のオーディオと海外のオーディオの音の違いを語られている文章といえる。
特定のディスクの、この個所がこんなふうに鳴った、というリポート的な試聴記がある。
そういう試聴記はどれだけは、細かく書こうと、リポートの域を脱することはない。
そんなリポート的試聴記がわかりやすいという読み手が少なからずいることは知っている。
そんな読み手に、B710の文章は、どう読まれるのだろうか。