ステレオサウンドについて(その103)
3012-R Specialについての、瀬川先生の文章を読んで、
はっきりとオーディオは新しい時代に入ったんだな、と確信していた。
4345の文章だけでは、新しい時代を迎えつつある──、そんなふうな感じ方だったのが、
はっきりと変った。
時間にすれば10分程度のあいだに、である。
ステレオサウンド 58号は1981年春号だ。
4343が’70年代のスピーカーとすれば、4345は’80年代のスピーカーなんだ。
SMEの新しいトーンアームは、そのためにも必要不可欠なモノなんだ、とも思ってしまった。
思い込んでいた、といってもいい。
ステレオサウンドを41号から読みはじめて四年ほどのあいだに、
欲しいと憧れたスピーカーは4343に加え、ロジャースのPM510が加わり、
4343の代りに4345に代ろうともしていた。
(いまでは4343なのだが)
アンプにおいても、そうだった。
欲しいと憧れていたモノは少しずつかわっていく。
憧れのモノを買える日には、またかわっていよう。
それでもトーンアームに関しては、3012-R Specialのままでいける──、
そんな確信めいたものがあった。
3012-R Specialは、いまもいいトーンアームである。
美しいトーンアームである。
その後の3012-R Proよりも、3012-R Specialの方が優美だ。
音に関してだけはSMEのSeries Vがある。
それでもレコード盤上を弧を描いていく様は、
3012-R Specialに惚れ惚れとしてしまう。
18の春、3012-R Specialは音も聴かずに買った。
ショーケースの中に箱に入ったまま飾られていた。
在庫は、その一本だけだった。