598というスピーカーの存在(その32)
私がいたころのステレオサウンドは、598のスピーカーに対して、肯定的とはいえなかった。
そのことはいまでも間違っていなかったと思うが、それだけではだめだったという反省が、いまはある。
598のスピーカーの新製品が出れば、試聴室で鳴らす。
そこで鳴らすのは、当時リファレンス機器として使っていたアキュフェーズのセパレートアンプ、
CDプレーヤーはソニーであったりアキュフェーズであったりしたが、
アンプにしてもCDプレーヤーにしても、スピーカー単体の価格の軽く十倍以上するモノばかり。
新製品紹介の記事は、その製品のお披露目の場であるわけだから、
可能な限り良く鳴らした状態で、ということがあった。
これはいまでも間違っていない、と思う。
だがこれだけでは定期刊行物のオーディオ雑誌としては、不十分である。
598のスピーカーに肯定的でなかったステレオサウンドだから、
実際に598のスピーカーがユーザーのところにおさまったとき、
どう鳴らされているのかを取材しておくべきだった、と、この項を書きながら反省している。
ステレオサウンド試聴室と598のスピーカーのユーザーのリスニングルームとでは、
ずいぶん条件は違っているはず。
アンプもCDプレーヤーも、セッティング、チューニングのレベルも、それから鳴らす音量も違う。
当時の598のスピーカーを選んだ人たちが、どういう理由で選んだのか、
それすらも知らなかったし、知ろうともしなかった。
別のオーディオ雑誌(別冊FM fanなど)にまかせておけばいい、という空気があった。
いま考えているのは、なぜそういう空気がうまれたのか、を含めて、
どうするのが正しい編集だったのか、である。