マランツ Model 7はオープンソースなのか(その1)
私が読みはじめたころの無線と実験には、
毎号、国内外のオーディオ機器の回路図が載っていた。
それ以外にも、オーディオ雑誌には、
過去のオーディオ機器の回路図が載っていることはけっこうあった。
有名なところではマランツのModel 7とマッキントッシュのC22。
同時代の、管球式コントロールアンプとしてもっとも知られる存在の二台は、
フォノイコライザーの回路が対照的ともいえる。
技術解説の記事、コピー製作の記事などで、
Model 7、C22の回路図はたびたび登場していた。
トランジスターアンプでも、JBLのSG520、SA600などの回路図も、割と載っていた方だ。
ある時期から、メーカー製のオーディオ機器の回路図が載る記事は減ってきた。
いまはどうか、というと、インターネットの普及により、
過去の製品に限れば、回路図だけでなくサービスマニュアルも公式、非公式で公開されている。
探すのにほとんど苦労はいらない、といえる状況になってきている。
サービスマニュアルとなると、
回路図だけでなくシャーシー構造、調整の仕方など、詳細な情報が載っている。
QUADの405のサービスマニュアルを見ると、405は小改良が加えられている、といわれてきたことが、
はっきりとわかる。
405から405-2になるまでにもいくつかのヴァージョンがある。
自分が気に入っているオーディオ機器のサービスマニュアルは、非常に勉強になる。
便利な時代である。
同時に、そういったサービスマニュアルを手にして見ていると、
これはオーディオのオープンソースといえるのだろうか、と考えてしまう。
オープンソース(open source)は、コンピューター関係から来ているわけで、
言葉通りであれば、ソースコードを公開する、という意味になる。
ソースコードは、オーディオではいわゆる回路図である。
オーディオ機器は回路図だけではまったく同じモノがつくれるわけではない。
ならばオーディオの世界では回路図が公開され、
細かな仕様まで公開されているとなると、オープンソースといえるのだろうか。
例えばマランツのModel 7ほど、オーディオ雑誌で取り上げられているアンプはない。
回路図の掲載回数においてもそうだし、Model 7の技術解説記事も多い。
日本マランツは1978年にModel 7とModel 9のキットを出している。
Model 7KとModel 9Kはトータルで80万円という、キットとしては最も高価なモノだった。
これに製作のコストがかかる。
目に見えるコストとそうでないコストがかかるわけで、その意味でも決してお買得な買物ではなかった。
それでもModel 7KとModel 9Kが存在していたということは、
オーディオ機器のオープンソースということを考えるにあたって、重要なことのように思える。