ロングランであるために(信頼性のこと・その1)
1970年代後半、アメリカ製アンプの謳い文句のひとつに、
MIL規格、MILスペックのパーツを使用、というのがあった。
MIL規格とはMilitary Standardのこと。
アメリカの国防総省で制定するアメリカ軍が調達する物資の規格のことである。
抵抗、コンデンサーといった電子部品にも、MIL規格がある。
日本ではプロフェッショナル機器が、時として高く評価されることがある。
アナログプレーヤーでいえばEMTの930st、927Dstがあり、
オープンリールデッキでは、
コンシューマー仕様のルボックスに対してプロフェッショナル仕様のスチューダーがあり、
アメリカ製ではアンペックスやスカーリーなどのプロ用機器の評価は高い。
JBLのスピーカーも、コンシューマーモデルとプロフェッショナルモデルとが用意されることが多かったし、
日本ではプロフェッショナルモデルの方が高く評価されがちでもあった。
物理特性、音が仮に同じであったとしても、
プロフェッショナル仕様ときくと、そこには信頼性の高さと寿命の長さが保証されている──、
そう受け取る人が多かったからであろう。
私もそうだ。
930stに憧れていたのは、音の良さだけではなく、信頼性の高さもあったからだ。
MIL規格の部品も同じように受けとめられていた感がある。
アメリカ軍の仕様を満たしているのだから……、誰だってそう思うだろう。
部品としての精度の高さと高信頼性を併せ持つ部品のように思えた。
それでいて実際のMIL規格がどういうものなのかはまったくしらなかった。
MIL規格の部品を使っているアンプは増えていった。
そうなると今度はアメリカ軍ではなく宇宙開発という謳い文句が出てきた。
つまりはNASAで認められた部品ということである。