オーディオ入門・考(レコードと音楽とオーディオと)
1974年冬にステレオサウンドから、「レコードと音楽とオーディオと」というムックが出た。
岡先生の書き下ろしによる本である。
この本のあとがきに、こう書いてある。
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《ステレオサウンド》とは創刊号からの長いおつきあいである。そのステレオサウンドの原田勲さんから、以前から、レコード愛好家のためのオーディオ入門みたいなものを一冊書け、といわれていた。《ステレオサウンド》のおかげで、ぼくはずいぶんオーディオの勉強をさせてもらったし、多分この雑誌のための仕事がなかったらそんな機会はなかったと思われるほど、たくさんのよいオーディオ機器をきく機会があったので、ぼくの体験はひじょうに広まったことも事実である。しかし、ぼくは依然としてオーディオの素人である。素人がもっともらしくオーディオ入門めいたことを書いたってろくなものができるわけはない。そんな考えで原田さんの注文にまるで自信がなかった。しかし、原田さんは一向にあきらめる気配がなく、時々そんなことをいう。そういうことが度重なると、なんだか自分にもそんな本ができそうな気がしてきて、ふとレコードとオーディオをむすびつけたテーマでならなにかやれそうに思ったのである。
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「レコードと音楽とオーディオと」は序章と十章からなる。
序章:二枚のボレロ カラヤンとオーマンディ
第一章:ハイ・ファイからオーディオへ
レコードと音楽のかかわりあい
第二章:エディスンから電気録音へ
レコードその技術の歴史
第三章:電気録音以後──ステレオまで
レコードとその技術の歴史
第四章:レコード再生のためのテクニック1
プレイヤー・システム
第五章:レコード再生のためのテクニック2
アンプリファイヤー
第六章:レコード再生のためのテクニック3
スピーカー・システム
間章:デシベル(dB)についての知識
第七章:レコード再生のためのテクニック4
音響再生の環境とリスニング・ルーム
第八章:現代のレコード録音
第九章:カッティング──プレス
レコードができるまで
第十章:再びレコードと音楽とオーディオと
「レコードと音楽とオーディオと」は岡先生でなければ書けない一冊である。
誰が書いたのかわからないような、
つまり誰が書いても同じような内容になってしまっているオーディオ入門書ではない。