真空管アンプの存在(その14)
トランジェント特性、いわゆる過渡特性の優れたスピーカーを語るとき、ホーン型は無視できないだろう。
ここで言うホーン型は、コンプレッションドライバーとの組合せを指す。
ドイツのアバンギャルドは、ホーンを採用しているが、コンプレッションドライバーには否定的である。
最初に断っておくが、コンプレッションドライバーとホーン型スピーカーについて、
感覚的なことを書いていく。
20年ぐらい前からなんとなく思ってきたというか、感じてきたことだが、
コンプレッションドライバーとホーン型スピーカーの動作は、
指で何かモノをはじくときに似ていないかということ。
ふつう人さし指(もしくは中指)を親指で抑えて、
人さし指にある程度力が蓄えられたときに、
親指からはなれると、勢いよく人さし指が前に動く。
親指で抑えずに、人さし指だけを動かしてみると、
どんなに速く動かそうとしても、軌道も安定しないし、スカスカといった感触の動きになる。
コンプレッションドライバーには、この親指の抑えの働きみたいなものが作用しているのでは。
いうまでもダイヤフラムが人さし指にあたる。
親指で抑えられた人さし指は、抑えられていないときに較べて、
力が蓄えられるまでの間、わずかとはいえ時間を必要とする。
コンプレッションドライバーのダイヤフラムも、
コーン型やドーム型のダイレクトラジエーター型にくらべて、
ほんのわずかかもしれないけど、時間を必要とするのかもしれない。
そのかわり、ダイヤフラムは解きはなたれたように、パッとすばやく立ち上がる。
この間(ま)というか、ほんの一瞬の「タメ」と、
すばやいダイヤフラムの動きが、
コンプレッションドライバーとホーン型スピーカーの魅力をつくっているようにも思える。
さらにつけ加えるなら、コンプレッションドライバーのダイヤフラムのエッジも、
ドーム型やコーン型とくらべると硬いことも関係しているだろう。