2015年ショウ雑感(日本のオーディオ、これから・その5)
瀬川先生がステレオサウンド 52号「最新セパレートアンプの魅力をたずねて」で書かれている。
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新型のプリアンプML6Lは、ことしの3月、レビンソンが発表のため来日した際、わたくしの家に持ってきて三日ほど借りて聴くことができたが、LNP2Lの最新型と比較してもなお、歴然と差の聴きとれるいっそう透明な音質に魅了された。ついさっき、LNP(初期の製品)を聴いてはじめてJBLの音が曇っていると感じたことを書いたが、このあいだまで比較の対象のなかったLNPの音の透明感さえ、ML6のあとで聴くと曇って聴こえるのだから、アンプの音というものはおそろしい。もうこれ以上透明な音などありえないのではないかと思っているのに、それ以上の音を聴いてみると、いままで信じていた音にまだ上のあることがわかる。それ以上の音を聴いてみてはじめて、いままで聴いていた音の性格がもうひとつよく理解できた気持になる。これがアンプの音のおもしろいところだと思う。
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52号は1979年に出ている。
私はまだ16だった。
オーディオをどれだけ聴いていたか──、わずかなものだった。
アンプとはそういうものなのか、アンプの音とはそういうものなのか、と思い読んでいた。
そして考えた。これがスピーカーだったら、アンプの音の透明度に相当するもの、
つまり「それ以上の音を聴いてみてはじめて、いままで聴いていた音の性格がもうひとつよく理解できた気持になる」音とは、
何なのかを考えていた。すぐには思いつかなかった。
そんなことを考えて半年、ステレオサウンド 54号が出た。
スピーカーシステムの特集だった。
黒田先生、菅野先生、瀬川先生が国内外の45機種のスピーカーシステムを聴かれている。
その中に黒田先生のエスプリ(ソニー)のAPM8の試聴記がある。
これを読み、これかもしれないと思った。
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化粧しない、素顔の美しさとでもいうべきか。どこにも無理がかかっていない。それに、このスピーカーの静けさは、いったいいかなる理由によるのか。純白のキャンバスに、必要充分な色がおかれていくといった感じで、音がきこえてくる。
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とはいえ、この時はいわば直感でそう感じただけだった。