ふたつの「T」(その1)
2020年東京オリンピックのエンブレムに関する騒動は、どうなっていくのだろうか、
そして関係者はどうするのか。
佐野研二郎氏のデザインには原案があり、
その原案はあるデザインと似ていたため修整が加えられ、発表されたものとなった。
その原案は公表するつもりはない、と大会組織委員会が語っていたけれど、
結局、原案は公表された。
そして、その日のうちに、この原案が何に似ていたのかが、インターネットでは話題になっていた。
すでにご存知の方も多いだろう。
「佐野研二郎 ヤン・チヒョルト」で検索すれば、いくつものサイトがヒットする。
佐野研二郎氏の原案は2013年に開催された、ヤン・チヒョルト展のロゴと、
その構成要素(長方形と三角形、円形)は同じだし、
その配置も基本的に同じである。
パクリだ、盗用だ、と騒然としている。
どちらもアルファベットの「T」である。
けれど受ける印象は大きく違う。
パクリというよりも、もはや劣化コピーとしかいいようがない。
ふたつの「T」の違いは、言葉にすればわずかである。
にも関わらず、大きな違いが印象として残る。
「細部に神は宿る」
昔からいわれていることを、これほど実感できることはそうそうない。
佐野研二郎氏を糾弾しようとは思っていない。
ふたつの「T」を見較べながら、自分自身も劣化コピーになっているかもしれない、と思わされた。
川崎先生の8月11日のブログ、『ハーバート・バイヤーを忘れた「デザイン風」の闘争』を思い出していたからだ。