ヴィンテージとなっていくモノ(その2)
ワディアのD/Aコンバーターの音を聴いたのは、知人宅だった。
聴いて、心底驚いた。
こういう音がCDから出るのか、と驚いた。
CDの音で驚いた経験が、なにもこれが初めてではなかった。
CD発表前夜、ステレオサウンド試聴室で聴いたマランツ(フィリップス)のCD63の音。
このCD63は、その後市販されたCD63と同じではなかった。
この驚きから、CDは始まった。
同じフィリップスのLHH2000の音に驚いた。
Lo-Dのセパレート型(SPDIF接続ではないモデル)の音にも驚いた。
LHH2000の音は、こういう音がCDから出るのか、と驚いた。
でも、こういう音がCDから出るのか、は同じでも、ワディアとは意味合いが違う。
LHH2000の初期モデルの音を聴いて、欲しいと思ったけれど、
あのとき、あの値段は出せなかった。それでも欲しい、と思い、帰宅した。
さすがに、この日は自分のシステムでCDの音を聴こうとは思わなかった。
だからアナログディスクをかけた。
プレーヤーはトーレンスの101 Limitedだった。
その音を聴いて、LHH2000と同じ音だと感じた。
はっきりと同じ類の音だった。
だからこそLHH2000を強烈に欲しいと思ったのだと気づいた。
でもアナログディスクであれば、この音を聴けるわけだから、LHH2000の購入計画をたてることはなかった。
Lo-Dのセパレートモデルでの驚きは、LHH2000の驚きとは違う。
CDがここまで良くなった、良くなるのか、という驚きだった。
これと同じ驚きは、国産の、その後登場したいくつかのCDプレーヤーにもあった。
そしてワディアでの驚きである。
この驚きは、どちらの驚きとも違っていた。
聴きながら、瀬川先生がマークレビンソンのLNP2を初めて聴かれた時の驚きは、
こういうものだったのかもしれない……、そんなことを思っていた。