世代とオーディオ(ジーンズとオーディオ)
別項のためにステレオサウンド 52号の瀬川先生の文章を読み返して、
あのころは特にひっかかる箇所ではなかったところに、いまはひっかかる。
この箇所である。
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70年代に入ってもしばらくは、実り少ない時代が続いたが、そのうちいつともなしに、アメリカで、ヴェトナム戦争後の新しい若い世代たちが、新しい感覚でオーディオ機器開発の意欲を燃やしはじめたことが、いろいろの形で日本にも伝わってきた。ただその新しい世代は、ロックロールからヒッピー文化をくぐり抜けた、いわゆるジーンズ族のカジュアルな世代であるだけに、彼らの作り出す新しい文化は、それがオーディオ製品であっても、かつてのたとえばマランツ7のパネル構成やその仕上げの、どこか抜き差しならない厳格な美しさといったものがほとんど感じられず、そういう製品で育ったわたくしのような世代の人間の目には、どこか粗野にさえ映って、そのまま受け入れる気持にはなりにくい。
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ステレオサウンド 45号にマーク・レヴィンソンのインタヴュー記事が載っている。
レヴィンソンはジーンズ姿だった。
スレッショルド、パスラボを設立したネルソン・パスもジーンズをはいているものばかり見ている。
彼らふたりだけではない、ジェームズ・ボンジョルノも当時はジーンズだった。
彼らは、確かに瀬川先生が指摘されているジーンズ族の世代にあたるし、
彼らより上の世代、マランツのソウル・B・マランツ、シドニー・スミス、
マッキントッシュのフランク・マッキントッシュ、ゴードン・ガウ、
この人たちの写真はいずれもスーツ姿だった。
彼らもジーンズは着用していたかもしれないが、
少なくとも取材で写真を撮られるときにはスーツである。
KEFのレイモンド・クックの印象は、つねにスーツである。
彼のジーンズ姿は浮んでこない。
いまの若い世代はジーンズをあまりはかない、とも聞く。
これが日本だけのことなのか、アメリカ、ヨーロッパの若い世代もそうなのか、
確かなことなのかどうかははっりきとしないけれど、
なんとなくそういう傾向があるのかな、という印象はある。
オーディオとジーンズ。これ以上のことは、いまのところ何も書けないけれど、
これからこのことに注意して見ていけば、もう少しなにか興味深いことが見つかるような気もする。