五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その2)
伊藤先生が晩年、無線と実験に6V6のシングルアンプを発表された。
手持ちのアンプがなくなったため、手持ちの部品で作られたアンプを記事にされていた。
このアンプ、最初はハムが出た、とある。
伊藤先生ほどの真空管アンプのベテランでも、ハムが出てしまう。
しかもあれこれハムを止めるためにやってみたけれどおさまらない。
結局チョークコイルを後付けして止った、とあった。
このくらいのアンプならばチョークなしでも大丈夫だろうと横着した結果がこれである、
そんなことを書かれていたと記憶している。
シングルアンプはハムが出やすい、というよりも、チョークコイルなしではほぼ出ると考えた方がいい。
プッシュプルアンプであればチョークコイルなしでもハムが出ることは、
よっぽどまずい設計か、よっぽどまずい配線の引き回しでもないかぎりハムに悩まされることはほとんどない。
シングルアンプもチョークコイルを使えばハムに悩まされることはないわけだが、
チョークコイルを使うのは初心者向きなのかどうかと考える。
チョークコイルを使うと、ステレオアンプだと鉄芯をもつ部品が、
出力トランス(二個)、電源トランス、チョークコイルと四つ使うことになる。
この四つを、どう配置するのか。
左チャンネルと右チャンネルのそれぞれのトランスを、どう配置するのがいいのか。
シャーシの左右両端に離すのか、それとも見映えも考慮して二個並べて配置するのか。
その場合に、トランスの向きはどうするのか。
初心者向きのアンプでは、コアが露出しているタイプのトランスが使われることが多い。
だからこそトランスの配置、向きは最初に押えておかねばならぬポイントであるにもかかわらず、
まったく触れていない記事の多いこと。