Date: 4月 19th, 2015
Cate: 正しいもの
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「正しい音とはなにか?」(録音のこと・その3)

市販されているプログラムソース(録音物)に懐疑的なのは、メーカー側の人たちの中にもいる。
たとえばマーク・レヴィンソンがそうだった。

ステレオサウンド 45号に「HQDシステムを完成させたマーク・レビンソン氏に聞く」という記事がある。
その中で、レヴィンソンはこう語っている。
     *
今日において、われわれの有するステレオ・コンポーネントの数々は、その再生能力において普通手に入るソース・マテリアルの持つフィデリティーをはるかに凌駕するものがあると思います。実際に、私達の製品の持っている本当の能力を正しく評価するためには、音の差について判断を下すことを可能にするような、特製のレコードやテープを用いることなしに不可能です。
     *
このころマーク・レヴィンソンはMLA(Mark Levinson Acoustic Recording)社をつくって、
スチューダーのマスターレコーダーA80のトランスポートと
自社製のエレクトロニクスによるML5による録音を行っていて、
レコード、ミュージックテープを販売していた。

一般的に市販されているレコード(録音物)は、
録音、マスタリング、カッティングなどの過程で音がいじられることがある。
グラフィックイコライザーや、その他の信号処理の機器が使われることも多い。

それは、いわば加工された音楽である、という見方をする人もいる。
日本では、無線と実験誌にDCアンプを早い時期から発表されている金田明彦氏も、
そういう考えで、1980年代はマイクロフォンアンプ、テープデッキの録音・再生アンプを自作され、
自分で満足・納得のいく録音を目指され、
そうやって録音されたものでアンプを開発されていた。

レヴィンソンはメーカーの人間、金田氏はアマチュアの立場という違いはあるものの、
市販されている録音物に懐疑的なところは共通していたからこそ、
自分の手で録音するという行動に出た──、そう受けとめていいと思う。

このことは正論のようにも聞こえる。
けれど、どこまでいっても正論のように聞こえるだけである。

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