Date: 4月 4th, 2015
Cate: 老い
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老いとオーディオ(その8)

執拗さで思い出すのは、バーンスタインの「トリスタンとイゾルデ」である。

そして「トリスタンとイゾルデ」といえば、ステレオサウンド 2号での、
小林秀雄「音楽談義」での五味先生の発言を思い出す。
このテーマだからこそ、思い出す。
     *
五味 ぼくは「トリスタンとイゾルデ」を聴いていたら、勃然と、立ってきたことがあるんでははぁん、官能というのはこれかと……戦後です。三十代ではじめて聴いた時です。フルトヴェングラーの全曲盤でしたけど。
     *
「勃然と、立ってきた」とは、男の生理のことである(いうまでもないとは思うけれど)。
この五味先生の発言に対し、小林秀雄氏は「そんな挑発的ものじゃないよ。」と発言されている。

ワーグナーは慎重で綿密で、意識的大職人である、とも。
そうだと思う。
思うけれど、何も男が勃起するのは相手の挑発的行動に対してだけではない。

だから五味先生が「勃然と、立ってきた」のは、フルトヴェングラーの全曲盤だったからではないのか。
ドイツ・グラモフォンから、
フルトヴェングラーの全曲盤から約30年後に登場してきたクライバーでは、どうだったのかと思う。

クライバーのドイツ・グラモフォン盤が出た時、五味先生はすでに亡くなられていた。
バーンスタインの「トリスタンとイゾルデ」も聴かれていない。

ただクライバーの「トリスタンとイゾルデ」に関しては、
1975年、バイロイト祝祭劇場でのクライバーの演奏は聴かれている。
高く評価されていた。

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