真空管の美(その5)
物質の燃焼温度が高くなれば、火の色は変ってくる。
人があたたかみを感じる色は、比較的低い燃焼温度である。
1977年、アルテックは、コンプレッションドライバーの802-8Dのフェイズプラグを、従来の同心円状の形状から、
オレンジを輪切りにしたように、スリットが放射状に並ぶタンジェリン状のものに変更した802-8Gを出した。
このタンジェリン状のフェイズプラグの色はオレンジだった。
タンジェリン(mandarin orange)だから、オレンジ色にしたのであろうが、
この色が、アルテックの音の温度感を表しているともいえる。
フェイズプラグは通常の使い方では目にすることはない。
それでもアルテックは、あえて色をつけている。
アルテックのユニットはトランジスターアンプの普及にあわせて、
インピーダンスをそれまでの16Ωから8Ωへと変更している。
だから604-8G、802-8Gのようにハイフンのあとに続く数時はインピーダンスを表すようになっている。
型番の数字はトランジスターアンプとの組合せを推奨しているようにみえても、
フェイズプラグの色は真空管アンプとの組合せを推しているようでもある。