オーディオの公理(その7)
ステレオサウンドは70号で、「真空管アンプの新しい魅力をさぐる」と題して、
28機種の真空管セパレートアンプの試聴を行っている。
ふだんのステレオサウンドの特集では登場しないブランドのアンプも、ここでは取り扱っている。
この試聴記事の冒頭には、
試聴メンバーの長島達夫、山中敬三、細谷信二による鼎談
「真空管アンプはなぜ音がいいのか、現代にも通用するサウンドの特質とその秘密をさぐる」があり、
試聴記事の後には「内外真空管アンプメーカーに聞く アンプづくりのポリシーとノウハウ」という、
アンケート調査の結果がある。
これらの記事から、真空管アンプの音について、公理といえることが読みとれるだろうか。
鼎談の中にも、ウォームトーンという単語が出てくる。
長島先生の発言だ。
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これは前から気になっていたことですけど、真空管アンプ=ウォームトーンという言葉が一時、流行しました。やわらかく穏やかで、全体を包み込むような雰囲気がある。そのかわり、中身がはっきり見えないということなんだ。はっきり言ってしまえば、音に偏りがあるアンプということだとぼくは思うんです。
それは、コンストラクションとか回路をわりあいとイージーにまとめてしまったことが原因なんですね。ところが、そういうアンプでも四次元目はあるわけです。その四次元目をあまりにもクローズアップしたがために、非常に大事な音の基本的な三次元の要素が忘れられてるということなんです。これはアンプとしてやっぱり落第だとぼくは思う。
本当の真空管アンプというのは、決してそんな特定の色合いはないんですよ。
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ここで公理として浮び上ってくるのはウォームトーンではなく、四次元目ということになる。