シンプルであるために(ミニマルなシステム・その8)
ワディアのPower DACは、オーディオ機器としてパワーアンプなのか、D/Aコンバーターなのか。
ワディアはPower DACと呼んでいるのだから、D/Aコンバーターの一種として開発したモノともいえる。
ステレオサウンド 133号のベストバイでは、Wadia 390 + Wadia 790はパワーアンプとして扱われている。
コンポーネンツ・オブ・ザ・イヤー賞でもパワーアンプとして受賞している。
ということはPower DACはD/Aコンバーター内蔵パワーアンプということになり、
そう捉えてみると、類似のオーディオ機器は以前からあることになる。
アルパイン・ラックスマンがD/Aコンバーター内蔵のプリメインアンプLV109を1986年に出している。
LV109にはフォノイコライザーは搭載されていなかった。
アナログディスク再生用にLE109が用意されていた。
入力はライン入力とデジタル入力のみのLV109は、
アルパイン・ラックスマンがもしPower DACだと呼んでいれば、Power DACと受けとめただろうか。
そんなことはなかったはず。
アルパイン・ラックスマンがどう呼称しようと、LV109はプリメインアンプであった。
デジタル入力を備えるプリメインアンプである。
ならばワディアのWadia 5はD/Aコンバーター内蔵のパワーアンプとして認識すべきである。
Wadia 390 + Wadia 790はコントローラーが別筐体ではあるものの、
やはりD/Aコンバーター内蔵のパワーアンプということになり、
ステレオサウンドのベストバイ、コンポーネンツ・オブ・ザ・イヤーのジャンル分けは間違っていない。
このことはWadia 5がステレオサウンド誌上に現れた時に考えたことだ。
アナログ入力のない、デジタル入力だけのパワーアンプである、と。
それでも私のなかでは、Power DACという認識である。
つまり8Ω負荷で200Wの出力をもつD/Aコンバーターである。
このことがシンプルについて考えていく上で、ずっと引っかかっていることであり、
シンプル(simple)とミニマル(minimal)の違いを、
オーディオにおいてよりはっきりさせていくように感じている。