何を欲しているのか(その9)
昔、カートリッジは、「音の宝石」とたとえられたこともあった。
針先のダイアモンド、オーディオ・コンポーネントの中でももっとも小さなパーツでありながら、
音を大きく変えてくれるカートリッジは、まさに「音の宝石」といえた。
いまはどうだろう……。
そういった意味よりも、むしろ価格の面で「音の宝石」となりつつある。
以前のように手軽に手を出せる価格のモノが減ってきて、非常に高価なモノの比率が増えてきた。
モノの価格がどうやって決められていくのか、それを知らないわけではないけれど、
いまのカートリッジの高価格化に、誰も疑問を抱かないのだろうか。
カートリッジは、オーディオの中で、数少ない消耗品である。
どんなに高価なカートリッジでも針先のダイアモンドの寿命は、大きく変ってくるものではない。
数万円のカートリッジよりも数十万円のカートリッジは、針先の寿命が10倍になるわけではない。
ほとんど同じである。
カートリッジの針先の寿命は、同じ製品でもバラつきによって異ってくる。
天然ダイアモンドを採用しているならば、カットしたときに生じるバラつきによって、
驚くほど長持ちするモノがあるし、反対にえっ、もう……と言いたくなるほど寿命が短いものもある。
いまはどうなのか知らないが、EMTのカートリッジはとくに、この差が大きかった。
きくところによる、その違いはダイアモンドのカットする時の結晶の方向に関係することらしい。