リファレンス考(その8)
リファレンス用のアンプに求められるのは安定動作であり、この優先順位はかなり高い。
そして安定動作に大きく関係してくることに温度がある。
試聴室はエアコンがはいってくるから室内温度に関してはコントロールできるが、
アンプの内部温度はコントロールできるわけではない。
もちろん、きちんと設計されたアンプならば長時間の使用でも、
まわりに十分な空間を確保していれば動作に影響が出ることはない、とは一応いえる。
けれど音に関しては、温度はかなり影響してくる場合がある。
1970年代後半からアンプのウォームアップがさかんにいわれるようになった。
電源を入れて保護回路が解除されればすぐに音は出せる。
けれど、そのアンプの実力が発揮されるには早いモノでも30分から1時間ほど、
遅いアンプでは数時間電源を入れておき、さらには鳴らしておく必要があった。
前者は寝起きが早いアンプ、後者は寝起きが遅い(悪い)アンプ、というふうにいわれるようになった。
では十分にウォームアップをすませたあとは問題はないのかというと、
必ずしもそうではない。
ステレオサウンドの試聴は、ときにはかなり長時間に及ぶこともある(いまはどうなのか知らない)。
アンプやCDプレーヤーはウォームアップをかねて、
試聴が始まる数時間前から電源をいれて音を出している。
これに試聴の実際の時間が加わると、10時間以上電源がいれられていることもある。
試聴では熱を発する機器をラックの中に押し込んだりはせずに、
放熱にはなんら問題のない置き方をしていても、機器によっては暖まりすぎて音が変化してくるモノがある。
電源をいれてしばらくしての変化は、ほとんどの場合がよい方向への変化であるが、
かなりの時間を使用しての変化は、悪い方向への変化である。