Date: 10月 28th, 2008
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サイズ考(その16)

1981年ごろのクレルとスレッショルドのパワーアンプのラインナップ構成は似ている。
最上級機がモノーラルで、下の2機種がステレオ構成で、規模も出力も価格に比例している。

こういうラインナップは川の流れに例えられる。
上流がいちばん小型の機種、中堅機が中流、最上級機が下流といったぐあいに、だ。

川の上流に行くにしたがい、川幅に狭くなり水流も少なくなる。
けれどわき出したばかりの水は勢いがあり、水しぶきも目にまぶしい。

中流に行くと川幅も広くなり水の量も増える。ただし水そのもの透明度や新鮮さは薄れている。

下流になると、圧倒的な水流になる。
天候の影響で水かさが増したとき、上流ではそれほど増えなくとも、下流ではものすごい水流となる。

クレルもスレッショルドも真ん中の機種、KSA100とSTASIS2が中庸といえる。
そのラインナップのリファレンス的な音であり、規模である。

下のモデル、KSA50、STASIS3になると、より反応がきびきびした印象が増してきて、
透明感も聴感上のSN比の良さもきわだってくる。
かわりに、やはりスケール感は、最上級機と比べるとあきらかに小ぶりになる。

KMA200、STASIS1は価格も規模も違うだけあって、たっぷりと音が出てくる印象をまず受ける。
すべてに余裕があり、SL6をKMA200で鳴らしたときのように、思わぬ驚きを聴かせてくれる。
これに、KSA50、STASIS3がもつ、反応の、きわだった良さが加われば
ほんとうに素晴らしいことだが、
残念ながら、80年代のアンプはこの傾向を克服できなかったように思う。

現在のアンプはどうだろうか。
同一ブランドのパワーアンプすべてをならべて聴く機会がないため、なんとも言えないが、
少なくとも技術は進歩している。
出力段に使われるトランジスター、FETにしても、
従来なら複数個並列接続して得ていた出力を、
いまなら1組、もっと少ない数の素子で実現できる。

もしかすると、いまは最上級機がすべてにおいて優れているのかもしれない。
けれど、それは案外、オーディオをつまらなくしている面もあるだろう。

以前のクレルやスレッショルドのような音の傾向の違いは、
何を求めるかによって──純度の高さを優先する人なら、
KMA200やSTASIS1を購入する経済力があっても、
KSA50やSTASIS3の選択があり得た。

KMA200やSTASIS1が買えなくて、KSA50、STASIS3をかわりに買ったとしても、
これならではの魅力に気がつけば、イソップ童話のキツネになることはない。

以前のパワーアンプには、こういう、必ずしもヒエラルキーに支配されない面白さがあった。
いまはどうなのだろう。

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