リファレンス考(その1)
ステレオサウンド編集部にいると、読者からの質問の電話を受けることがある。
誰が質問に答えるのか、ということは私がいたころは決っていなかった。
特定の記事についての質問ならば、担当編集者が答えることもあるが、
そうでない質問であれば、電話を受けた者が答えていた(いまはどうなのか知らない)。
私がたまたま受けた質問で、試聴室のリファレンス機器について、というのがあった。
その質問があったころ、試聴室のリファレンス機器はスピーカーがJBLの4344、
アンプはアキュフェーズのC280VとP500Lの組合せ、
アナログプレーヤーはマイクロのSX8000IIにSMEの3012-R Proの組合せだった。
質問してきた人は、なぜアンプがアキュフェーズなのか、ということだった。
もっといいアンプがあるし、それらのアンプをステレオサウンドは高く評価している。
なのに、なぜ、それらのアンプをリファレンスとして使っていないのか──、そういうことだった。
オーディオ機器にReferenceの型番がつけられるようになったのは、
私が記憶するかぎりではトーレンスのアナログプレーヤー、Referenceからである。
その後、ゴールドムンドのアナログプレーヤーもReferenceの型番で登場した。
そのイメージが強いのか、
Reference=もっとも優れた機種という認識が、質問してきた人の中にできあがっていたようである。
それもわかる。
トーンレスのReferenceは、ほんとうにすごいパフォーマンスをもつプレーヤーだった。
私もトーンレスのReferenceが登場してきて、その音を聴いた時には、
Reference=最高の音を出すモノというイメージをもっていた。
けれどReferenceの意味はそうではない。