ラックのこと(その12)
スピーカーシステムから家具的要素が失われていき、
ラックからも家具としての要素がなくなっていった。
ケーブルが高価になっていくのと同じように、ラックも非常に高価になっていっている。
従来のラックが音に対しての配慮がほとんどなされていなかったのに、
いまのラックは音への配慮がなされているのだから、これらの変化は当然のことだ──、
と受けとめられているようだ。
わからなくはないが、それにしても……、という感じる面はある。
10数年前にきかれたことがある。
なぜ、こんなにケーブルメーカーが増えたのか、と。
ケーブルは、アンプやスピーカー、その他のオーディオ機器と違い、まず故障しない。
断線はまれにあっても、修理は簡単である。
アンプやチューナー、CDプレーヤーなどの電子機器は、
まずどこが故障しているのかを探ることから始めなければならない。
ケーブルの断線はすぐにわかることである。
それに保管しておく場所もそれほど必要としない。
スピーカーシステムは在庫を抱えてしまったら、保管としておく場所を確保するだけでも大変である。
スピーカーシステムは、半ば空気を売っているようなものだ、といわれていた。
保管の場所もとれば輸送の場所もとる。
とにかくスペースを要求するモノだけに、空気を売っているようなものだ、ということになる。
ケーブルはそういうことはない。
場所もとらない、故障もしない。
これだけでも、売る側にとって楽になる。
ラックにも、そういえる。
故障することは、まずない。
組立て式のラックならば、場所もそれほど必要としない。