Date: 10月 7th, 2010
Cate: D44000 Paragon, 瀬川冬樹
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確信していること(その5)

1957年11月に登場したD44000 Paragonは、JBLにとって、ステレオ時代をむかえて最初に発表した、
文字通り、ステレオスピーカーシステムである。
そして60年をこえるJBLの歴史のなかで、もっとも寿命のながかったスピーカーシステムでもある。

パラゴンの前には、D30085 Hartsfield がある。
ステレオ時代のJBLを代表するのがパラゴンならば、このハーツフィールドはモノーラル時代のJBLを代表する。
1955年、Life誌にてハーツフィールドは「究極の夢のスピーカー」として取りあげられている。

ハーツフィールドとパラゴンは、デザインにおいても大きな違いがある。
どちらが優れたデザインかということよりも、
はじめて見たとき(といってもステレオサウンドの記事でだが)の衝撃は、
私にとってはハーツフィールドが大きかった。

はじめて買ったステレオサウンド 41号に掲載されていた「クラフツマンシップの粋」、
そのカラー扉のハーツフィールドは、美しかった。たしか、ハーツフィールドがおかれてある部屋は、
RFエンタープライゼスの中西社長のリスニングルームのはずだ。

こんなにも見事に部屋におさまっている例は、
しばらくあとにステレオサウンドで紹介された田中一光氏のハークネス(これもまたJBLだ)だけである。

ハーツフィールド(もしくはハークネス)が欲しい、と思うよりも、
この部屋まるごとをいつの日か実現できたら……、そんな想いを抱かせてくれた。

若造の私も魅了された。
ハーツフィールドと同じ時代をすごしてこられた世代の人たちにとっては、
私なんかの想いよりも、ずっとずっとハーツフィールドへの憧れは強く、熱いものだったろう。

瀬川先生にとってハーツフィールドは、
「永いあいだわたくしのイメージの中での終着駅であった」と書かれている。
(「いわば偏執狂的なステレオ・コンポーネント論」より)

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