何を欲しているのか(その6)
全体的にインフレ傾向にあるといえる、いまのこのオーディオの状況の中で、
しかもながくオーディオをやってこられて、こつこつシステムを改良・構築してこられた人にとって、
10万円では、直接、そのシステムの音を良くするものを、何かひとつでもいいから購入しようとしても、
でも自作や録音であれば前述したように、10万円あれば本人にやる気さえあればかなり楽しめる。
その経験は、直接的にはないが間接的には、
いま鳴らしているシステムの音を確実に次の段階にすすめる何かへと、
その人の中で変化して実を結んでいく、と信じている。
10万円では、いまの、このような状況下では、新品で、キャリアの長いオーディオマニアを満足させるものが、
はたしていくつあるのだろうか。
ひとつある。ヘッドフォンがあった。
10万円の予算があれば、最高価格のものはヘッドフォンといえど無理だが、
そうとうにいいモノを手にいれられる。
ヘッドフォン端子のないアンプを使われている方も、いまや少なくないだろう。
でも、ヘッドフォン、イヤフォンがブームになっているおかげで、
ヘッドフォン用アンプというジャンルが確立されてきている。
量販店のオーディオのコーナーに行くと、人が少ない。
けれど隣にあるヘッドフォン、イヤフォンのコーナーは人があふれている。
いろんな人が来ている。
スピーカーの鳴らすステレオフォニックなイメージと、
ヘッドフォンのバイノーラルなイメージはいっしょくたにできるのではないが、
スピーカーの調整、とくに帯域バランス調整の確認には、いいヘッドフォンは役に立つ。
部屋の音響特性の影響を受けないヘッドフォンが、音の理想再生とは私はいわないが、
部屋の影響を受けずに聴くことが可能なヘッドフォンの音は、参考になる。
ずっと以前に菅野先生は、ヘッドフォン(そのときはスタックスの製品をとりあげられていたはず)を、
「感覚の逸脱のブレーキ」と表現されていた。
ブレーキがあれば、思い切ったことに挑める。ここが最も肝要なことではないだろうか。
REPLY))
ヘッドフォンにはブレーキの一面があるとは思いますが、昨今のヘッドフォンブームはどう見てもゼネラルオーディオ色が強すぎてハイファイオーディオとは価値の衝突が見られるように思います。
REPLY))
とりごん さま
コメント、ありがとうございます。
ただクォリティオーディオ(ハイフィデリティオーディオ)にも、
「ゼネラル」なものは必要なのではないか、というふうにも思っています。
「ゼネラル」なものが完全に欠けてしまっていては、趣味として成立しなくなるのではないでしょうか。