ショルティの「指環」(その11・補足)
ノイマンのカッターヘッドは、SX68のあとにSX74が登場している。
どちらも型番の数字は、発表年をあらわしている。SX68は1968年、SX74は1974年。
ならばショルティの「復活」のオリジナル盤制作に使われたSX45はというと、
正確な年代は不明だが1958年ごろだときいている。
つまりSX45の「45」だけは年代ではなく、45°/45°のステレオレコードからきている。
SX68が登場した頃、SX45からの音質改善はめざましいものがあったようで、
SX68サウンド、という言葉もうまれたときいている。
それだけにSX74を、改良ではなく改悪というひともいたらしい。
SX68、SX74にして、これらはカッターヘッドのみであり、
ドライブアンプ、カッティングレースは、それぞれ用意されている。
SX74用ドライブアンプとしてはSAL74がある。
トランジスター式の準コンプリメンタリー方式で、出力は600W+600W(9.5Ω負荷でのブリッジ接続時)。
SX68、SX74ともにドライブコイル(スピーカーのボイスコイルに相当)のDC抵抗は4.7Ω、
インピーダンスは10kHzで7.5Ω。
ただ20kHzでは10Ω近くになり、5kHz以下では4.7Ω付近になる。
そのためドライブアンプの負荷をどの周波数においても一定に保つために、
SLA74から見た場合、全帯域で9.5Ωのインピーダンスになるよう、
ドライブコイルとSLA74とのあいだには抵抗とコンデンサーを並列接続したネットワークがいれてある。
カッティング・レースとしてよく知られているのはノイマン。ほかにスカリーもあるが、
ノイマンのVMS70の登場により、スカリーもノイマンの旧タイプ(VMS60)もほとんど姿を消したときいている。
VMS70の回転スピードは、33 1/3rpm、45rpmのほかに、16 2/3rpm、22 1/2rpm、それに78rpmもある。
78回転があったからこそ、オーディオ・ラボから出た「ザ・ダイアログ」のUHQR盤は、
LPにもかかわらず78回転盤が可能だったのだろう。