電子制御という夢(その4)
ソニーは電子制御のトーンアーム技術にバイオ・トレーサーと名称をつけていた。
ステレオサウンド 49号に掲載されたPS-B80の広告のキャッチコピーは、こう書いてあった。
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スタティックバランスアームの黄金時代は、もう10数年も続いてきました。
しかし──
5つの、「電子の眼」を持ち、128ワード×4ビットの「電子頭脳」を持ち、
垂直・水平ふたつのリニアモーターで駆動する電子制御アームの出現は、
ひょっとしたら、流れを変えてしまうかも知れません。
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トーンアームの透視図も載っていた。
とはいっても、この透視図を見ても、具体的にどういう仕組みになっているのかを完全に理解するのは無理だったし、
これだけでは、ソニーのバイオ・トレーサーがどの程度の可能性をもつ技術なのかも判断もできなかった。
それでも、とにかく新しい技術が登場してきたことはわかるし、
少しでも理解したい、とは思っていた。
ただPS-B80に搭載されていた電子制御トーンアームは、新しい形とはいえなかった。
試作品がそのまま登場してきたような仕上りだった。
パイプ部とヘッドシェルに関しては通常のトーンアームと同じ。
軸受けまわりがずいぶんと違う。
PS-B80は超軽の金属ケースからアームパイプが出ている。
この長方形の金属ケース内にセンサーや垂直・水平のリニアモーターが内蔵されているわけだが、
それにしても大きい、と感じさせる。