なぜ逆相にしたのか(その7)
コーン紙は、その名が示すように円錐(cone)状だ。
こういう形状のものが前後に動く場合、どちらの方向に動きやすいかといえば、頂角のほうである。
つまりコーン型スピーカーでいえば、コーン紙が前面に動くよりも、
後へのほうが抵抗が少なくすっと動く。
コーン紙の動きに関して、前後の対称性はすこし崩れていることになる。
ただ実際にはエンクロージュアにスピーカーユニットを取りつけた場合には、
後への動きにはエンクロージュア内の空気圧の影響を受けるために、
前後どちらの方へが動きやすいかは一概にはいえなくなるが、
振動板の形状(向き)が、動きやすさに関係していることは事実である。
コンプレッションドライバーの振動板は、ほとんどがドーム型である。
バックプレッシャー型であれば、振動板の頂点は、コーン型スピーカーと同じく後を向いている。
単純に考えれば、後への方が動きやすい。
ここにコンプレッションドライバーの構造が、要素として加わる。
コンプレッションドライバーの場合、振動板の直径よりもスロートの径のほうが小さい。
しかも振動板とフェイジングプラグとがごく接近して配置されている。
振動板とフェイジングプラグとのあいだに存在する空気の量は、ごく少ない。
これにホーンがつくわけだ。