うつ・し、うつ・す(その3)
音は人なり、ということから、その人が鳴らす音は鳴らし手をうつす鏡であるということは、
ずっと昔からいわれ続けている。
鏡といえば、鏡ともいえよう。
だが鏡には、実のところ何もうつってはいない。
鏡が正面にある。
そこには自分の姿が映っている。
けれど鏡を斜めから見ている人と正面から見ている人とで、
鏡に見ているものは違っている。
鏡が映画のスクリーンのように何かを映し出しているのであれば、
正面の人も斜めの人も同じものを見れるはずだが、そんなことはない。
それが鏡である。
誰も鏡のほんとうの姿をみることはできない。
だから音を鏡にたとえることには完全には同意できないでいる。
でも、その反面、そういう鏡だからこそ、オーディオ(2チャンネル方式)の音と似ている、ともおもえてくる。