Date: 5月 13th, 2014
Cate: 「オーディオ」考
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十分だ、ということはあり得るのか(その3)

黒田先生の著書「レコード・トライアングル」に「レコードにおけるマーラーの〈音〉のきこえ方」がある。
1978年に書かれた、この文章で、黒田先生は三枚のマーラーの第五交響曲のレコードをとりあげられている。

一枚目は、ブルーノ・ワルター指揮ニューヨークフィルハーモニーによるもので、1947年録音。
二枚目は、レナード・バーンスタイン指揮ニューヨークフィルハーモニーで、
ワルターと同じコロムビアによるもので、1963年録音。
三枚目は、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニーで、
1973年、ドイツ・グラモフォンによる録音。

一枚目は二枚目には16年、二枚目と三枚目には10年の開きがある。
一枚目のワルターによるマーラーは、当然モノーラルで、録音機材はすべて真空管式。

二枚目のバーンスタインからステレオ録音になるわけだが、
バーンスタインのころだと録音機材のすべてがトランジスターになっているかどうかは断言できない。
一部真空管式の機材が含まれていてもなんら不思議ではない。

三枚目のカラヤンにおいては、おそらくすべてトランジスター式の録音機材といえるだろう。
それにマイクロフォンの数も、同じステレオでもバーンスタインよりも増えている、とみていい。

録音機材、テクニックは、カラヤン/ベルリン・フィルハーモニーのマーラー以降も、
変化(進歩)しつづけている。

カラヤンの10年後の1983年ごろにはデジタル録音が主流になっているし、
さらに10年後の1993年、もう10年後の2003年、2013年とみていくと、
ワルターのマーラーから実に半世紀以上経っている。

マーラーの音楽に興味をもつ聴き手であれば、ワルターによるものももっているだろうし、
バーンスタイン、カラヤンも持っていて、さらに結構な枚数のマーラーのレコード(LP、CD)を持っている。
そして、それらを聴いている。

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