オーディオ評論家の「役割」、そして「役目」(300Bのこと・その5)
ウェスターン・エレクトリックの劇場用アンプで、91型アンプがある。
このアンプが、伊藤先生の300Bシングルアンプの、いわば原器である。
Sound Connoisseurにて、伊藤先生は91型アンプについて書かれている。
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音質が抜群に優れ、故障が少なく、維持費が低廉なため小劇場向きに高評を得ていたが、プリアンプを省いてメインアンプのゲインを高めたため、入力側の結線に細心の注意が必要であり、光電管側の出力トランスの断線が唯一の悩みの種であった。
終段に三極管を用い三段増幅で、よくもこれだけのゲインを稼げたものと思える設計である。負帰還を本格的に用いてフィルム録音特性に対応させた回路をメインアンプに備えたものとして、当時は目を瞠らせたものである。東京地区では歌舞伎座の向い側、いまはない銀座松竹映画劇場に在って僅か8Wの出力で十分に観客を娯しませていたのを憶い出す。
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300Bのシングルアンプが、楚々とした日本的な美しい音という枠だけにとどまった音しか出せないのであれば、
「僅か8Wの出力で十分に観客を娯しませ」ることは無理なのではないか。
映画ではさまざまな音が流される。
人の声もあれば、音楽も流される。
それ以外にも効果音と呼ばれる類の音も欠かすことができない。
スクリーンに映し出されるシーンに応じた音が求められ、スピーカーから流される。
そういう場で使われ、観客を娯しませてきた300Bシングルアンプ(91型)である。
300Bについて、
しかもオーディオ評論について書いている項で書いているのか、
察しの良い方は、ここまで読まれて気づかれているだろう。