オーディオ評論家の「役割」、そして「役目」(300Bのこと・その3)
ウェスターン・エレクトリックの300Bにどれだけ優れた真空管であっても、
300B一本でアンプが作れるわけではない。
電源トランス、整流管、平滑コンデンサーから構成される電源が必要だし、
300Bに必要なだけの入力電圧をかせぐために電圧増幅段もいる。
それに出力トランスがなければ、スピーカーを鳴らすことはできない。
300Bといえど、アンプの一部品にしかすぎない、といえるわけで、
300Bの音について語ることは厳密には無理というものだ。
300Bを使用しているアンプをいくつ聴いたところで、
300Bの音だけを聴いているわけではない。
理屈ではそうなのだが、いくつか注意深く聴いていると、
300Bの音らしきものを感じることはできる。
だからこそ多くの人が300Bに夢中になるのだろう。
では300Bの音とは、どういう音なのか。
300Bは直熱三極管であり、日本ではシングルアンプの製作例が多いし、
いくつか市販されたアンプもシングルアンプが多い。
そのためだろうか、三極管シングル、という言葉が持つイメージが、
300Bのイメージにすり替わっているようにも感じることがある。
300Bシングルの音は、楚々として日本的な美しい音。
これなどは、まさにその典型的な例である。
300Bの音は、
300Bのシングルアンプの音は、そういう音なのか、といえば、まったく違う。