妄想組合せの楽しみ(カラヤンの「パルジファル」・その10)
マーラーの交響曲第二番の第二楽章。
美しい旋律である。
初めてマーラーの第二交響曲を聴いた時にそう感じた。
感じたけれど、その時は、あとでふり返ってみると、なにもわかっておらずにそう感じていたことがわかる。
五味先生は、「マーラーの〝闇〟とフォーレ的夜」でこう書かれている。
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マーラーの交響曲中でもおそらく彼の書いたもっとも美しい旋律の一つといわれる同じ『第二交響曲』第四楽章とともに、この第二楽章アンダンテ・モデラートの——たしかにシューベルトのレントラーを想わせる個所はあるが——弦にはじまる冒頭から第一主題への、旋律の美しさに無関心でいるためには余程鈍感な感性が必要だろう。
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実は、ここまで美しい旋律とは思えなかった。
幾多の、美しい旋律のひとつとしか、その時は感じられなかった。
それからいくつものマーラーの第二交響曲を聴いてきた。
マーラーの交響曲は、オーディオ機器の試聴にも使われることが多いから、
自分で買ったレコード以外であっても、聴く機会はあった。
そうやって聴いてきて、何枚目の第二交響曲のレコードだっただろうか、
誰の指揮だったのかも、いまとなってはなぜだか憶えていない。
それでも、その時の第二楽章の美しい旋律は、
それまで聴いて感じてきた美しい旋律は、表面的にしか捉え切れなかった美しい旋律であって、
その奥に、五味先生が書かれている通りの「美しい旋律」が流れていることに、やっと気づいた。
こんなにも美しい旋律なのか、ととまどうほどに、そう感じられた。