ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その5)
10代に男子における女性ヴォーカルものの比重は、人それぞれではあろうが、
人生のうちでもっとも大きな時期のひとつかもしれない。
ステレオサウンド 41号とともに最初に手にしたオーディオ誌であるステレオサウンド別冊の
「コンポーネントステレオの世界 ’77」で、いちばんくり返し読んだ組合せのページは、井上先生担当の、
「聴くもののこころに ひっそりと語りかけてくる〈歌〉を
AGI+QUADで鳴らす ブリガンタンのぬくもりのある音で味わう」、
この見出しがついていた、女性ヴォーカルのための組合せだった。
「コンポーネントステレオの世界 ’77」には、
瀬川先生による室内楽のための組合せ(スピーカーシステムはタンノイ・アーデン)、
ルネッサンス、ネオ・バロック音楽のための組合せ(JBL・4343)も、もちろんくり返し読んだけれど、
回数的には、井上先生の組合せのほうだった。
この本は、読者からの手紙に応えるかたちで、評論家の方々が、いっしょに組合せを構築していくという企画だ。
井上先生宛の手紙を書かれていた方は、山崎ハコの「綱渡り」、ジャニス・イアンの「愛の回想録」、あと「絵夢」を、
「ひっそりときけて、それでいて声のなまなましさが失われないような装置」を求めておられた。
井上先生の答えは、キャバスのフロアー型システム、ブリガンタンと、
ロジャースのLS3/5Aの、ふたつのスピーカーシステムだった。