マルチアンプのすすめ(その10)
オーディオの再生系における主役は、スピーカーである、と。
ずっと昔からそういわれてきていたし、そうだと思う。
とはいえ、マークレビンソンが、私にとって全盛期と感じられていた時代、
ちょうどステレオサウンド 53号あたりの時代は、
アンプが主役でもいいのではないだろうか、と考えたことはあった。
53号の瀬川先生の、オール・マークレビンソンの記事は、
カラー口絵をみれば、多くの人が感じることだと想うが、
4343が主役というよりもマークレビンソンのアンプ、それもML2が主役という感じを受ける。
あくまでも4343の限界がどこにあるのかを確かめるための、それを引き出すための企画であるのに、
システム全体が醸し出す視覚的な雰囲気は、アンプこそがオーディオの中心である、
とマーク・レヴィンソンが主張しているような気さえしてくる。
スピーカーをよく鳴らすためにアンプは存在しているはずなのに、
アンプの優秀性・凄さを証明するための存在としてスピーカーが接続されている──、
マルチアンプシステムのあやうさが、まずここにある、といえよう。