トーキー用スピーカーとは(その2)
トーキー用のスピーカーとは、いったいどういうものなのか。
このことについて考えていくことのはじまりとなったのは、
ステレオサウンド 46号に掲載された広告であった。
シーメンスのスピーカーの輸入元であった關本の広告にはこうあった。
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「お気づきですか……足音」
映画における足音。
これは意外とむずかしいものです。
M.ブランドとE.M.セイントの〝波止場〟での1シーン。
会話に聞き入っていると聞こえない足音。
しかしサウンド・トラックには、ちゃんと録音されているのです。
足音の録音が、録音技術者のウデの見せどころであるように、
トーキー・サウンド・システムのスピーカの設計者にとっても同じこと。
しかしこの音、目立ってはならない音ですから、
はりあいこそありませんが、映画にはつきもの。
全体のムードにかかせないものです。
シーメンスには、この縁の下の力もち的足音に取組んで数十年。
映画〝F1〟におけるツインカム
フラット12の、
あのバカでかいエクゾースト・ノートを、より迫力あるものに、
しかし足音はさりげなく……。
この、大と小を一手に引き受けようと生まれてきた、
シーメンスのオイロダインやコアキシャルたち。
これぞ頑固なドイツ人の熱き情熱。
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同じ動作原理のスピーカーであっても、
家庭用スピーカーで聴くものといえば、ほぼすべて音楽といえる。
音楽といっても幅広いとはいえ、音楽であることには違いない。
中には音楽よりも自然音の再生だったり、鉄道の音、自衛隊の演習の音などだったりしたとしても、
そういう人だって音楽を鳴らすことが主目的であり、そのことをスピーカーに求めているはず。