音の良さとは(その1)
音を聴く。
どこか誰かのリスニングルームで、その人の「音」を聴かせてもらう。
一枚目のディスクが鳴る。
一枚で終ることは、まずない。
二枚目、三枚目とディスクはつづいていく。
それまでまったく耳にしたことのないジャンルの音楽だとそうはいかないけれど、
よく聴くジャンルの音楽であれば、
それが初めて聴くディスクであったとしても、
三枚目あたりから、このディスクならこんなふうに鳴ってくるだろう、という予測ができるようになる。
三枚目あたりのディスクも初めてであったとしても、
途中まで聴いていれば、クラシックであれば曲そのものは知っているわけだから、
つづく箇所がどう鳴るのかは予測がつくものである。
予測のとおりの音が鳴ってきた。
そうかぁ……、とひとりおもっている。
予測した音が鳴ってくることは、悪いことではない。
ある程度、そのシステムが鳴っていることでもある。
どこかに大きな不備があれば、予測は外れることもあるからだ。
とはいえ予測のとおりの音が鳴ってきたら、それでいいのかといえば、そんなことはない。
むしろ、ここが「出発点」なのだから。
経験によって、予測は少しずつ精確になってくる。
だからといって、その予測が精確なことを自慢したいわけではない。
予測のとおりの音を求めているのでもない。
求めてきたわけでもない。
求めているのは、常に予測をこえる音である。