私的イコライザー考(妄想篇・その5)
こんな、傍から見れば馬鹿げたことでしかないのを考えるようになったのには、
あるきっかけがある。BOSE・901の広告である。
1979年ごろ、オーディオ雑誌に載っていたBOSE・901の広告に、
ブックシェルフ型スピーカーを片チャンネルあたり9本、両チャンネルで18本を並べたものがあった。
「生演奏の再現には、これだけのスピーカーが必要です。」というキャッチコピーがついていた。
ブックシェルフ型スピーカーはアメリカ製と思われる、いわば標準的なサイズのもので、
バスレフ型の3ウェイ仕様。
これを3段重ねにして3列。これが片チャンネルにあたる。
そして中央の1本だけが正面を向き、残りの8本は後向きである。
つまりBOSE・901のスピーカーユニット配置と同じことを、
3ウェイのブックシェルフ型スピーカーで実現しようとすると、
こういう大変な規模になる、ということでもあり、
こういう大変な規模を、BOSE・901は常識的なサイズにまとめあげたともいえる広告である。
この広告を見た時、私は高校生。
なんと馬鹿げたことを……、と思うよりも、実際にこれを試してみたい、と思った。
思っただけでなく、これを実際に試聴してほしい、とステレオサウンド編集部に手紙も書いている。
それもブックシェルフ型ではなく、できればJBL・4343を片側9本、計18本集めてやってほしい、と。
BOSE・901には専用イコライザーが付属している。
このイコライザーによる周波数特性の補整なしでは、
901の音は中域だけに音のエネルギーが集中したナロウレンジである。