複数のスピーカーシステムを鳴らすということ(その6)
オーディオのコンポーネントの中で、特にスピーカーシステムは擬人化されて語られることがある。
昔からあったし、いまもある。
オーディオをやっているのは女性よりも圧倒的に男性が多いこともあってなのだろうが、
スピーカーシステムの擬人化は、女性としての擬人化であることもまた多い。
ステレオサウンドにおいて、そう語られることが幾度かあった。
例えば黒田先生はJBLの4344のことを、4343のお姉さんと表現されている(ステレオサウンド 62号)。
菅野先生もそれまでのJBLの3ウェイのシステムというメインとなるスピーカーをもちながら、
新たにマッキントッシュのXRT20を迎え入れられてから、
これらふたつのスピーカーを女性にたとえられている。
黒田先生による擬人化と菅野先生による擬人化は、まったく同じというわけではない。
黒田先生の場合、
もし4344が4343よりもやんちゃな音の性格だったとしたら、4343の弟と表現されたはず。
4344という、4343の後継機の音の性格が、黒田先生にとってお姉さんと呼ぶにふさわしかったからである。
菅野先生の場合は、音楽を聴いていく人生の伴侶としてのスピーカーの擬人化だから、
女性、つまり妻としてたとえられたわけであり、
仮に菅野先生が男性ではなく女性だったとしたら、伴侶という意味ではスピーカーを男性にたとえられたであろう。
ここでの女性としての擬人化は、それぞれのスピーカーシステムの音が女性的であるとか、
そういった意味とはニュアンスが異る。
ところが上杉先生の場合は、はっきりとした女性としての擬人化で、
自宅で鳴らされているスピーカーシステムについて語られている。