598のスピーカーという存在(その13)
一本59800円のスピーカーシステムは、いわば普及クラスの製品ということになる。
オーディオをやり始めたばかりの学生にとっては、59800円は安くはない。
スピーカーシステムは二本必要だから、スピーカーだけで約12万円。
598のスピーカーシステムに、価格の点で見合うアンプ、CDプレーヤー、アナログプレーヤーを選べば、
それぞれ6万円前後のモノを揃えたとしてトータルで30万円になる。
これにチューナーやカセットデッキを加え、
さらにはスピーカースタンド、ラックも加えていくと……。
その金額は、いまの非常に高価な製品が当り前になりつつある現状からみれば、
高価なケーブルの値段と同じくらい、という見方もされよう。
それでも、598のスピーカーシステムを購入する層は、そういう層ではない。
598のスピーカーシステムが、オーディオ用と呼べる最初のスピーカーシステムであったり、
はじめてのグレードアップ対象となるスピーカーシステムであったはずだ。
そういう価格帯の製品であっただけに、各社の力の入れようは激化していったのかもしれない。
にも関わらず、598のスピーカーシステムは各社とも似ていく方向にある時期向いていた。
1988年の598のスピーカーシステムに、
ビクターのSX511、オンキョーのD77X、デンオンのSC-R88Zなどがある。
これらのスピーカーシステムの重量は31kg、34kg、34.5kgである。
598のスピーカーシステムは長岡鉄男氏の影響もあって重くなっていった、と書いているが、
実際にどれだけ重くなっているかというと、
1988年の5年前の1983年の598のスピーカーシステムの重量は、
ビクターのZERO5Fineが21.5kg、オンキョーD7Rが22kg、ダイヤトーンDS73Dが21kgであり、
10kg前後、重量が増している。五割増しというわけだ。
しかも外形寸法には大きな変化はない。