「オーディスト」という言葉に対して(その2)

ピアノ(piano)を弾く人をピアニスト(pianist)という、
ヴァイオリン(violin)を弾く人をヴァイオリニスト(violinist)という、
チェロ(cello)を弾く人をチェリスト(cellist)という。

オーディスト(audist)は、だからオーディオを弾く人、というように理解できる。
ステレオサウンド 179号に掲載されている山口孝氏の文章で、
私はこの「オーディスト」という言葉を目にした。

目にして、山口孝氏による「レコード演奏家」の表現でもある、と思った。

「レコード演奏家」は菅野先生が提唱されている。
ステレオサウンドから「新レコード演奏家論」が出ている。

レコードを演奏する、ということについては、拒否反応を示される人、
反論される人がいることを知っている。
ここでは「レコード演奏家」についてはこれ以上ふれないけれど、
「レコードを演奏する」という表現は、何も菅野先生が最初に使われていたわけではない。
菅野先生が「レコード演奏家論」を書かれるずっと以前から、
瀬川先生も「レコードを演奏する」という表現を使われている。
それも、かなり以前から使われている。

ということは、そのころにオーディスト(audist)という言葉を思いついた人もいたのではないか、と思う。
でも山口孝氏が「オーディスト」を使われるまで、私は目にしたことがない。

なぜだろうか。
誰も思いつかなかった、という理由もあげられるだろう。
けれど、どうもそうとは思えない。
「レコードを演奏する」という表現が使われていながら、
ヴァイオリンによって音楽を演奏する人をヴァイオリニスト、
ピアノによって音楽を演奏する人をピアニスト、というのならば、
オーディオによって音楽を演奏する人をオーディストと呼称する人があらわれてもなんら不思議ではない。

オーディストという言葉は、audioにistをつけただけであり、
ひねりも工夫もそこには感じられない。

なぜ、誰も使わなかったのか。
それは、オーディスト(audist)が、
聴覚障碍者を差別する人・団体という意味で、アメリカでは使われているからである。
それもかなり以前から、である。

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