「音は変らない」を考えてみる(その4)
スピーカーの変更によってのみ変る要素とは、
スピーカーの支配する領域のことである。
こんな当り前すぎることを、今回改めて考えることになったわけである。
そしてこのことと同時に思いだしたことがある。
瀬川先生が熊本のオーディオ店で定期的にやられていた「オーディオ・ティーチイン」で、
アンプの比較試聴を行われた。
そのとき、こんなことをいわれた。
「アンプの音のち害がよくわからない、といわれる方がいらっしゃる。
スピーカーの音の違いというのは、人でいえば外観の違いであり、
アンプの違いは内面の違いともいえる。」
スピーカーの音が人に喩えれば外観であり、
アンプの音がその人の内面、という表現はわかりやすいと思ったし、
もちろん、この喩えには瀬川先生もこまかいことをつけ加えたいと思われていたであろうが、
オーディオ・コンポーネントの中におけるスピーカーとアンプの音のどういうところを支配、関係してくるのか、
そのことを的確に表現されている。
アンプやケーブルを替えても「音は変らない」と頑なに主張する人の音の聴き方が、
私なりに掴めた、とやっと思えた。
スピーカーが、いわば音の外観に深く関係しているということは、
そのシステムの音の「顔」といえる領域は、スピーカーの領域ともいえよう。