数字からの解放(その4)
マーク・レヴィンソンは、LNP2、JC2をよりよいアンプとして完成へと近づけていくために、
常に改良を加えていたことは、よく知られている。
型番こそLEMO製のコネクターを採用した時点で、末尾に「L」がつけられるようになったぐらい。
しかも、これは日本市場だけの型番の変更であり、並行輸入対策でもあった。
アメリカや他の国で売られていたLNP2、JC2などは末尾に「L」はついていない。
マークレビンソンのアンプが、他のメーカーのような型番のつけ方をもしやっていたとしたら、
LNP2は、MK5とかMK6でも足りずに、もしかするとMK10ぐらいまでいっていたのかもれない。
そこまで改良が加えられてきたLNP2、
マーク・レヴィンソンはひとつひとつ使用部品の音を丹念に聴き分けていっていた、という。
このレベルになると、測定結果には違いは出ない、といっていい。
トランジスターを互換性のある別の品種のものに換えれば、
わずかとはいえ測定結果に違いは出る。
けれどどこか一箇所のコンデンサーなり抵抗を交換したとき、
音はわずかではあっても確実に変化する。けれどおそらく、このときの音の違いは測定結果としてあらわれない。
もしかすると最初のうち、マーク・レヴィンソンは部品を交換しては測定をしていたのかもしれない。
けれど、どんなに精密な測定を行ったとしても違いが出てこない。
それで音が変らなければそこで済んでしまうことなのだが、
そこに少しでも音の変化があれば、無視できない。
部品を交換しては音を聴き、判断する。
そしてまた部品を交換し……。
こういうことを何度も何度もくり返し、ひとつのアンプを洗練させていく。
この気の遠くなるような行為が、マーク・レヴィンソンを数字から解放したのかもしれない。