オーディオと「ネットワーク」(おさなオーディオ・その1)
1980年代、菅野先生がステレオサウンドにおいて「きたなオーディオ」という表現を使われたことがある。
「きたなオーディオ」、つまり「汚いオーディオ」ということである。
音のため、音質最優先という名目で、見た目はまったく考慮しない。
とにかく音さえ良ければ、それで良し、とする一部の風潮に対してつけられてものである。
この「きたなオーディオ」には、
この時代になると、ただ見た目が悪い、ということだけにはとどまらない。
たとえば最新の、仕上げのよいオーディオ機器を、
高価なラックにきちんとおさめて、セッティングにも気を使っている。
どこにも1980年代のころの「きたなオーディオ」の要素は見当たらないように思える。
けれどスピーカーケーブルが部屋の真ん中を這っている。
スピーカーケーブルではなくとも、ラインケーブルが部屋の中央を這っている。
専用のオーディオルームに、比較的多く見られる、この状態も「きたなオーディオ」ともいえる。
しかも、部屋の真ん中にケーブルを這わせている人が使っているのは、
不思議なことに太く、高価なケーブルのことが多い。
私がいたころ、ステレオサウンドの試聴室ではスピーカーケーブルは、
試聴室の真ん中に這わせていた。
これは六本木という、外来ノイズのひどいところにおいて、きちんと試聴するための手段であったし、
試聴室という、いわば実験・テストの場でのケーブルの這わせ方でもある。
ケーブルを最短距離で這わせようとすれば、
たしかに部屋の真ん中を這わせることになる。
ケーブルを視覚的に目立たせないように部屋の隅を這わせていくと、
当然ながらケーブルは長くなる。
高価なケーブルがますます高価になっていくわけだ。