prototype(その1)
1970年代後半、まだ中学生、高校生で実家で暮していたとき、
オーディオ雑誌に載るオーディオフェアの記事は、ほんとうに楽しみにしていた。
オーディオフェアに行きたい、とそのころは思っていた。
もちろんオーディオフェアという会場が、音を真剣に聴くにはふさわしい場所ではないことは、
そのころの記事でも書かれていた。
それでも行きたかったのは、オーディオフェアでしか見ることのできないモノがあって、
その「モノ」がオーディオ雑誌で紹介されていると、
ますます「行きたい」という気持は強くなっていっていた。
若い世代の方は驚かれるかもしれないが、
そのころステレオサウンドの別冊として、まるまる一冊オーディオフェアのムックが、
2年続けて出ていたこともある。
定期刊行物のオーディオ雑誌ではページ数がとれないから写真も小さく解説も少なくなるけれど、
別冊というかたちになるとそんな不満はなくなる。
こういう企画は地方に住んでいて、東京になかなか出ていく機会のない(すくない)読者にとっては、
東京、もしくは近郊に住んでいて電車にのればオーディオフェアに行ける人には、
なかなか理解されないであろう、うれしいものであった。
現在開催されているオーディオ関係のフェア、ショウしか知らない世代にとっては、
当時のオーディオフェアの規模はなかなか想像しにくいのではなかろうか。
東京でのインターナショナルオーディオショウ、大阪でのハイエンドオーディオショウ、
2つのショウをあわせても、1冊すべてショウ関係の別冊を出すことは、難しい。