Archive for 5月, 2014

Date: 5月 3rd, 2014
Cate: 4343, JBL

JBL 4343(その2)

JBLは1960年代にハークネスで左右対称のユニット配置を取り入れている。
にも関わらず4343では左右対称にしていない。

4343の前身4341も左右対称ではない。
4341も2405の位置を変えられるようになっているが、
位置を変えたところで左右対称配置にはならない。

4350もユニットの位置を変えられるようになっている。
2405だけではなくミッドハイを受け持つ2440+2311-2308も入れ替えることになる。

4343も4350も出荷時に左右対称配置にしてくれれば、使い手としてはありがたい。
そうしてくれてれば2405の位置を変えたければ、スピーカーそのものを左右で変えればすむ。

4343は79kg、4350は110kg。軽いとはいえない重量だが、
2405の位置を変える手間からすれば4343そのものを左右で入れ替えた方がてっとりばやい。

4343はなぜ2405の取り付け位置をユーザーにまかせてしまったのか。
その理由をあれこれ、以前は考えていた。

まず誰もが思いつくのは、そうしたほうが生産しやすいからだろう、である。

だが細かく考えていくと、ほんとうにそうなんだろうか、と思えてくる。
2405の位置を変えるための穴を余計にひとつあけなくてはならない。
さらにそこを塞ぐための板を用意して取り付ける作業がふえる。
ネジも四本余計に必要になる。

手間もコストも、わずかとはいえ余分にかかる。
そんなことをメーカーがするだろうか。
これは別の理由があるのではないか。

私が出した答は、デザインがその理由である、ということだ。

Date: 5月 3rd, 2014
Cate: 4343, JBL

JBL 4343(その1)

4343のユニット配置はインライン配置である。
ただしスーパートゥイーターの2405に関してはインライン配置にしてしまうと、
エンクロージュアの高さがその分必要になるためなのか、
ミッドハイを受け持つ2420+2307-2308の横に取り付けられている。

つまり音響レンズの横に2405はある。
そして音響レンズの、2405が取り付けられている反対側には丸い穴がメクラ板でふさがれている。

ようするに4343は出荷時には左右の指定はない。
ユニット配置は左右対称ではなく左右共通である。
だからそのままの4343を部屋に設置すると、
片チャンネルの2405は外側に、反対チャンネルの2405は内側にくる。

ウーファー、ミッドバス、ミッドハイの三つのユニットはインライン配置なので、
2405だけがこういうふうになるのは気にする人にとっては、すぐにでも変更したくなる点である。

そうなるとミッドバス、ミッドハイ、
2405の三つのユニットを取り付けているバッフルをエンクロージュアから取り外して、
2405の位置を片チャンネルのみ変えることになる。

特に難しい作業ではないけれど、面倒な作業と思う人もいるだろう。

それにしても、なぜ4343は最初から左右対称のユニット配置で出荷しなかったのだろうか。

Date: 5月 2nd, 2014
Cate: audio wednesday

第40回audio sharing例会のお知らせ(アクースタットのこと)

今月のaudio sharing例会は、7日(水曜日)です。

テーマについて考えていた。
ブログの記事の本数が4300本をこえたので、いまはJBLの4300シリーズのことを主に書いている。
4320のことについても書いている。
そのなかでアクースタットのスピーカーについてふれた。

これだけだったらほかのテーマにしようと思っていたところに、
昨晩友人が知らせてくれたリンク先で、
スティーヴ・ジョブスの1982年当時のオーディオ機器について、これまでよりも詳細について知ることができた。

スピーカーがアクースタットのModel3なのは、一目両線ですでに知っていたことだ。
それでもアクースタットのスピーカーについて書いていたときに、こういう記事が公開された偶然に、
今回のテーマはアクースタットについて語ろう、と決めてしまった。

アクースタットのスピーカーについては、ステレオサウンド 43号の新製品紹介のページで知った。
当時の輸入元はバブコ。
ACOUSTATの表記はアコースタットだった。

このときの製品はAcoustat Xだった。
縦長の振動板を三枚使用し、
電圧増幅段はトランジスター、出力段のみ真空管を採用した専用アンプを搭載していた。

コンデンサー型スピーカーの駆動には高電圧が必要となる。
通常のコンデンサー型スピーカーにはトランスが使われるが、
Acoustat Xはもともと高圧を扱う真空管の出力段からトランスを省き、
つまりOTL構成とすることで、ダイレクトに振動パネルを駆動するというものだった。

このころの私はコンデンサー型、
それもフルレンジのコンデンサー型こそがスピーカーの理想に最も近いと考えていた。
そんな私にアクースタットの登場は、理想に近いスピーカーの登場のように映った。

けれどステレオサウンドの特集にアクースタットが登場することはなかった。
44号、45号はスピーカーが特集にもかかわらず、だ。

次にアクースタットのスピーカーがステレオサウンドに登場するのは、
またも新製品紹介のページで、49号である。
Monitorという型番に変り、振動パネルも四枚に増えていた。
専用アンプ搭載、その構成は前作と同じである。
このMonitorも特集記事に登場することはなかった。

このアクースタットのスピーカーが、ずっと気になっていた。

時間はこれまでと同じ、夜7時からです。

場所もいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 5月 2nd, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(続×六・バッファーアンプについて)

パワーアンプの選択ということでもうひとつ思い出すことがある。
スチューダーのA68とルボックスのA740のことである。

スチューダーとルボックスの関係を知っている人ならば、
A68とA740という、このふたつのパワーアンプについて知らなくとも、どういう関係がそこにあるのか想像がつく。

最初に登場したのはスチューダーのA68であり、
しばらくしてA68をベースにルボックスがコンシューマー用パワーアンプとして登場させた。

A68はプロフェッショナル用であるから、入力端子はXLR端子のみ。
もちろんバランス入力となっていて、さらにはトランスが挿入されている。
フロントパネルにはメーターはない。
基本的にブラックパネルで、左右の入力レベル調整が独立してついているのと電源スイッチくらいである。

A740にはパワーメーターがついている。それから入力レベル調整にも、割と大きなツマミがつけられている。
それからスピーカーの切替機能を新たに設けられている。
入力端子はRCA端子の他にXLR端子もついているが、A68とは異りバランス入力でもなくトランスも挿入されていない。

A68とA740は見た目からして、プロフェッショナルとコンシューマーの違いをはっきりと打ち出している。

両機の回路図はインターネットで探せば比較的簡単に見つかる。
電圧増幅段、出力段はA68をベースにしているから、A740も同じだが、
A68はプロフェッショナル用として不要な帯域に対しての扱いが、A740ともっとも異る。
入力トランスがバンドパスフィルターであるし、その後にRFフィルターも設けられている。

機能的にはA740のほうが豊富といえるが、
アンプの回路としては、A740の方がシンプルともいえる。

このふたつのパワーアンプ、
瀬川先生はA740が登場したころは、A68とよく似ているとしながらもA740をA68よりも高く評価されていた。
それがあとになってA68を高く評価されている。

この変化にはリスニングルームの変化が関係している──、
と私はおもう。

Date: 5月 2nd, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4320(その10)

JBLの4320から4343、4343からアクースタットへのスピーカーの移り変りについて、
つまり「スピーカーが変ってきた背景では、音楽の状況そのものも変ってきた」とされ、
オリジナル楽器による演奏が増えたきたこと、そして、いまもJBLであったなら、
「ああいう変則的な倍音を使った楽器の音が、あそこまでおもしろいとはおもえなかったかもしれない……」
とも書かれている。

こういうふうに「音楽とハードが持ちつ持たれつ変っていく」わけである。
だから黒田先生は「幾つになってもXとYを可変の状態においていたい」とされている。

変るのは音楽の状況とスピーカー(ハードの変化)だけではない。
聴き手もまた変っていく。変っていくスピードは違っていても。

このことはなにも聴き手側・再生側だけの話ではない。
送り手側・録音側にもいえることであり、
この送り側にはレコードという送り手とオーディオ機器という送り手がある。

送り手にも可変のXと可変のYが存在する。
スピーカーシステムの製作者にも可変のXと可変のYがあり、
このふたつが掛け合されるところでスピーカーが生まれてくる、ともいえよう。

しかもこのことはコンシューマー用スピーカーよりも、
録音の現場で使われるスピーカー(プロフェッショナル用スピーカー)のほうが、
可変のXと可変のYを無視するわけにはいかない。

JBLの4320とほぼ同じといえるユニット構成である4331、
同じJBLのスタジオモニターでも4320と4343の違いを語るとき、
可変のXと可変のYを抜きにしては、だから無理である。

Date: 5月 1st, 2014
Cate: iPod

ある写真とiPhone(追補)

二年半ほど前に「ある写真とiPhone」を書いた。

先ほど友人からのメッセージが届いていて、そこにジョブスのオーディオについての記事へのリンクがあった。
以前見た写真でははっきりしなかったことが、この記事でわかる。

Date: 5月 1st, 2014
Cate: 香・薫・馨

便利であっても(その11)

グラシェラ・スサーナの日本語の歌を聴いて、まず驚いたのは情景が浮んでくる、ということだった。
グラシェラ・スサーナの歌う、すべての日本語の歌がそうとはいえないけれど、
かなりの数の歌で、歌詞が描いている情景が浮んでくる。

グラシェラ・スサーナが歌って情景が浮んできた日本語の歌を、
もともと歌っていた人の歌唱で聴いても、必ずしも浮んでくるわけではなかった。
これは歌唱力の巧拙だけではないことはわかる。

では、情景が浮ぶのか(または浮ばないのか)。

言葉という具象的なものの中で、日本人にとってもっとも具象的な日本語で歌われるわけだから、
歌詞を含めて、その曲そのものが描こうとしている情景が、他の言語の歌よりも浮びやすいというところはある。
ならば、より正確できれいな日本語の発音による日本語の歌の方が、
歌唱力がほぼ同等であれば、情景は浮びやすくなる──、といえるのか。

少なくとも私の場合、そうとはいえない。
何が情景を浮び上らせるのか。私の中で情景が浮んでくるのか。

結局は、薫り立つものが、そこでの歌に感じられるかどうか。
私の場合はどうもそのようである。

気になっている(その3)

玄人とは辞書には、一つの物事に熟達した人。専門家。本職、とある。
英語ではprofessional、specialist、expertとなる。

オーディオの玄人とはオーディオの専門家、もしくはオーディオを本職とする人と、まず考えられる。
オーディオを本職とする人──、
つまりオーディオを仕事として対価を得ている人ということになる。

オーディオメーカーに勤めている人が、それにあたる。
何もメーカーの技術職の人だけでなく、営業関係の人もオーディオを仕事にしているわけだから、
オーディオの玄人ということになる。

輸入商社の人にも同じことがいえる。

他にもオーディオ店で働いている人。
彼らもまたオーディオを仕事としているわけだから、オーディオの玄人であるわけだ。

それからオーディオ雑誌の編集者もそうなる。
オーディオメーカーの技術職だけでなく営業関係の人もオーディオを仕事にしているのと同じように、
オーディオ雑誌を出版している会社の、
編集部以外の部署の人たちもオーディオの玄人と言おうと思えばいえなくもない。

とはいえ現実にはオーディオメーカーの営業関係の人たち、
出版社の編集部以外の人たちを、ここで無理に含める必要はない。

そしてオーディオ評論家、と現在呼ばれている人たちも、またオーディオの玄人ということになる。

こういう人たちがオーディオの玄人として挙げられるが、
果してオーディオを仕事にしているだけでオーディオの玄人と呼べるのだろうか。