Archive for 1月, 2009

Mark Levinsonというブランドの特異性(その20)

ML2Lは、出力段がA級動作のため、消費電力は常時400Wながら、出力は8Ω負荷時で25W。
ただ、同時代の他のパワーアンプと違うのは、スピーカーのインピーダンスが4Ω、2Ωとさがっていくと、
理論通りに50W、100Wの出力を保証している。

4Ω負荷で2倍の出力を得られるものは数は少ないながらもいくつか存在していたが、
2Ωまで保証していたものはなかった。

またML2Lを方チャンネル当り2台必要とするブリッジ接続では、
8Ω負荷で、これも理論通りの100Wを実現している。
ブリッジ接続時では4Ω負荷で200Wまで保証している。

このブリッジ接続に関しても、大抵のアンプは2倍までの出力増にとどまっていた。

ブリッジ接続はスピーカーの+側と−側の両方からドライブする。
つまり8Ω負荷の場合、アンプ1台あたりの負荷は半分の4Ωになる。
負荷が4Ωになれば、出力は2倍になる。しかも±両側からのドライブだから、
さらに2倍になり、4倍の出力が得られるわけだ。

ML2LはA級動作ということに加え、出力が理論通りに増加することの実現で、
理想的なアンプ、完璧なアンプという印象を与えようとしていたように、いまは感じなくもない。

Date: 1月 24th, 2009
Cate: ジャーナリズム

オーディオにおけるジャーナリズム(その3)

人にはそれぞれ大切にしていることがある。

しかし、それは、赤の他人からすれば、どうでもよい、ちっぽけなことだったりすることもある。
それでも、当の本人には、大切なことに変わりはない。

けれど、ちっぽけなことと受けとめた、まわりの人は知らぬうちに踏みにじることもあるだろう。
その時は気がつかない、時間が経ってから、その人にとってそれが大切なことであったことを知る。
今にして思えば……と後悔するが、遅い。
私だって、そんなことをしてきたし、いまでも気がつかずにしているかもしれない。

「思いやり」とは、踏みにじる、その前に気がつく心でもあると思っている。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その19)

ML2Lが登場した時にも、その後にも話題になったことはほとんどないが、
ML2Lはバランス入力を装備している。
1970年代後半のこの時期、バランス入力をもつコンシューマー用パワーアンプは、
すこし前に登場したルボックスのA740ぐらいだった。

当時バランス出力をもつコントロールアンプは、コンシューマー用モデルには存在してなかった。
だから話題にならなくて当然とも言えるのだが、なぜML2Lはバランス入力だったのか。
LNP2LもXLR端子は備えていても、アンバランス出力であり、
少なくともマーク・レヴィンソンが指揮していた時代に、バランス出力のコントロールアンプは登場しなかった。

ML2Lの入力端子は、CAMAC規格のLEMOコネクターによるアンバランス入力が2系統ある。
通常の非反転入力(正相)、反転入力(逆相)、それにバランス対応のXLR端子だ。

アンバランス入力で使用する場合には、使わないアンバランス入力にショートピンを挿しておく。
XLR端子でショートさせても同じことだ。

反転入力の場合、バッファーアンプを経由することになる。

ML2Lのバランス入力はブリッジ接続を可能にするためにつけられたのではないかと、私は見ている。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その18)

ジョン・カールは、ML2Lの回路とコンストラクションは、JC3と同じだと言っていた。
だから彼に訊いた。「あのヒートシンクは、特注品なのか、誰のアイデアなのか」と。

私の中では、星形のヒートシンク・イコール・ML2Lとイメージができ上がっているほど、
強烈な印象を与えていたヒートシンクは、実は、一般に市販されていたもので、
JC3にも当然使用していた、とのこと。

そういえば1970年代なかごろ、ダイヤトーンのパワーアンプDA-A100は、
カバーがかけられているため目立たないが、ML2Lと同じ型のヒートシンクを使っている。
それにマークレビンソンと同じ時代のアンプ・ブランド、
ダンラップ・クラークのDreadnaught 1000、Dreadnaught 500も、サイズはひとまわり小さいようだが、
やはり同型のヒートシンクを、シャーシーの左右に、むき出しで取りつけている。
Dreadnaught 1000は空冷ファンを使っているため、ヒートシンクは横向きになっている。

たしかに、ジョン・カールが言うように、市販されている、一般的なパーツだったようだ。

なのに、なぜML2Lだけに、星形のヒートシンクのイメージが結びついているのか。
Dreadnaught 500も、真上から見たら、ML2Lと基本的なコンストラクションは同じといえよう。

異るのは、ヒートシンクの数とその大きさ。
ML2Lを真上から見ると、ヒートシンクが3、中央のアンプ部のシャーシーが4くらいの比率で、
ヒートシンクは左右にあるため、半分以上はヒートシンクが占めている。

一方Dreadnaught 500は、ヒートシンクがひとまわり小さい。
それにパネルフェイスの違いもある。

ML2Lは中央下部に電源スイッチがひとつと、ラックハンドルだけのシンプルなつくりなのに対して、
Dreadnaught 500は、2つの大きなメーターのほかに、電源スイッチと4つのツマミがあり、
どうしてもパネルの方に目が行ってしまう。

ML2Lには精悍な印象がある。音だけでなく、見た目にも無駄な贅肉の存在が感じられない。

1976年のCESのマークレビンソンのブースに展示されていたステレオ仕様のパワーアンプが、
ジョン・カールが主張するJC3そのものだとしたら、
ML2Lのイメージは、JC3のイメージそのものであり、
おそらくこのアンプこそ、JC3であった可能性が高い。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その17)

ML2Lは、シャーシー両サイドに3基ずつ、計6基のヒートシンクを備えていて、
この星形のヒートシンクが、ML2Lの外観上の大きな特徴にもなっている。

アンプ内部のコンストラクションは、フロントパネルの真裏に電源トランス、
そして平滑用コンデンサー、金属の仕切り板(シールド板)があり、
その向こうにプリント基板が2枚垂直に取りつけられている。
リアパネル側に近いほうが電圧増幅段で、もう1枚が定電圧回路と保護回路となっている。

6基あるヒートシンクは、左右で+側と−側に分かれており、
それぞれフロントパネルの真裏の1基ずつが定電圧回路の制御トランジスターが取りつけてある。

ML2Lは、電圧増幅段だけでなく、ドライバー段、出力段の電源供給をすべて定電圧電源から行なっている。
言うまでもなくML2LはA級動作のパワーアンプである。
この部分の放熱量もかなりのものとなる。

真ん中と後ろ側のヒートシンクが、出力段のためのもので、
それぞれのヒートシンクにパワートランジスターが2つずつ取りつけられている。
真ん中のヒートシンクにはドライバー段も含まれている。

つまりML2Lの出力段は、4パラレル・プッシュプルである。

これらのヒートシンクは、上下の取りつけネジを外せば、容易に取り外せる。
電圧増幅段の基板、定電圧電源・保護回路の基板も、
メイン基板にコネクターで接続されているので、交換は容易だ。

メンテナンス性は高く設計されている。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その16)

ヴェンデッタリサーチを興したころのジョン・カールにインタビューした時の話を元に書いている。

その時は不思議に思わなかったけれど、彼は、この時、JC3の回路図のコピーを用意していた。
事前に、マークレビンソン時代のことを訊くことは伝えていなかったし、
マークレビンソンのことが話題になったのも話の流れから、であった。

なのに彼は、JC3の回路図のコピーを2枚渡してくれた。
1枚は手書きのもので、もう1枚はインターネットで公開されているもの。
ほとんど同じだが、一部定数が異る箇所があるくらい。

インタビューは、1987年ごろだった。マーク・レヴィンソンと決裂して10年は経っている。

いま思えば、ジョン・カールは、アンプの技術者としての誇りを、
まわりは、なぜ? そこまでこだわるのか、と思うほど、大切にしていたのだろう。
だからこそ、己が設計(デザイン)したアンプには、JCとつけるのであって、
それを無断で外されること以上の、彼に対する侮辱はないのかもしれない。

Date: 1月 22nd, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その47)

ステレオサウンドの試聴室では、JBLの4344の下にダイヤトーンのDK5000をかませて使っていた。
DK5000の一辺は9cmだから、4344の底面と床の間に空間が生じる。この空間が案外厄介である。

こんなわずかな空間でも定在波が発生するし、後ろの壁から回り込んできた音との絡みもあるのだろうが、
この空間に吸音材を入れた音を聴いてみてほしい。
もちろん吸音材はグラスウールではなく、天然素材のものが好ましい。
ウールでもいいし、かなり厚手のフェルトでもいい。その吸音材を、スピーカーの底板に接触しないように置く。

その大きさは試聴を繰り返しながら、最適値を決めていくしかないが、とにかく、まず吸音材がある音とない音を聴く。
聴感上のSN比に注目して聴けば、その差は明らかだろう。

ダイヤトーンのスピーカーDS2000専用のスタンドのDK2000は、これらのことも考慮して作りとなっている。
スピーカー本体とベースが平行にならないようになっているし、
スピーカーを支える脚部も、ハの字にすることで、やはり平行面をなくしている。

台輪(ハカマ)付きのスピーカーでも、この定在波は発生している。

Date: 1月 22nd, 2009
Cate: 五味康祐

五味康祐氏のこと(その1)

もう10年ほど前になるか、週刊文春で剣豪小説を取りあげた企画があった。
座談会形式だった。五味先生についても語られていた。

五味先生は、「喪神」により1953年(昭和28年)2月に、第28回芥川賞を受賞されている。
松本清張氏の「或る『小倉日記』伝」との同時受賞。

この時の芥川賞の選考委員は、川端康成、丹波文雄、舟橋聖一、石川達三、瀧井孝作、佐藤春夫、宇野浩二、
坂口安吾の8氏。

週刊文春によると、坂口安吾氏が、もっとも強く推されたとある。
記憶がかなり曖昧だが、坂口氏がもし選考委員でなかったら、五味先生の芥川賞受賞はなかった、
そういう印象だった。
坂口氏は「この男は、大化けする。」、そう言って推されたそうだ。

「文藝春秋」1953年3月号に選評の概要が載っている。

坂口安吾氏は語っている。
「剣士や豪傑については日本古来の伝承的話術があり、この作品はそれに即している如くであるが、
実はそれに似ているだけで、極めて独創的な造形力によって構成された作品である。
かかる発明はとうてい凡手のなしうべからざるところで、非凡の才能というべきである。」

丹波、舟橋、宇野3氏の、そっけなく冷たい評とは、まったく異る。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その15)

JC1、JC2のJCは、ジョン・カール (John Curl) の頭文字である。

ジョン・カールに聞いた話では、当時、彼が住んでいたスイスまで、
マーク・レヴィンソンが訪ねてきて、彼の手もとにあったJC3を回路図と一緒にアメリカに持ち帰った。
それから1年以上が経ち、マークレビンソンからML2Lが発表された。
しかも、そのまえに、JC2がML1Lへと変更されている。

MLはもちろんMark Levinson の頭文字である。
この変更についても、事前にジョン・カールに何の連絡もなかった、ときいている。

このふたつの件で、ジョン・カールとマーク・レヴィンソンの仲は、完全に決裂する。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その14)

1976年のスイングジャーナルのオーディオのページに、CESの記事が載っている。
そこに興味深いものが写っている。

マークレビンソン・ブランドのパワーアンプである。
ML2Lの登場は77年であり、モノーラル・パワーアンプで、出力は25W。

写真のパワーアンプにはまだ型番はなく、プロトタイプと思われる。
外観はML2Lそっくりで、独特の星形のヒートシンクが左右に3基ずつある。

ML2Lとの相違点は、ステレオ・パワーアンプということ、そして出力は15W+15W。
しかもフロントパネル中央には、電源スイッチが2つついている。

2つの電源スイッチが、左右独立したものなのか、片方がスタンバイスイッチなのかは、
まったく説明がないのと、写真が不鮮明で小さいため、はっきりとしたことはわからない。

おそらくこれがジョン・カールが言う「JC3」なのだろう。

Date: 1月 21st, 2009
Cate: ジャーナリズム

オーディオにおけるジャーナリズム(その2)

1989年の1月20日付けで、ステレオサウンドを辞めた。

実際には有給休暇が1ヵ月近く残っていたので、12月下旬の時点で仕事からは離れているが、
今年で20年経つ。節目といってもいいだろう。

その節目のときに、私にとってももうひとつの大事な節目である、瀬川先生と同じ46歳になるというのは、
これもなにかの縁かもしれない、と勝手に思っている。

いまはまったくオーディオとは無関係の仕事に就いている。
これから先、仕事としてオーディオと関わっていくのかどうかは、まったくわからない。
それでも、編集の仕事とは何か、という問いを、自分に投げかける。

四六時中考えているわけではない。でも、当り前のように考える。
無意味なことを考えるなんて、と思われる人がいてもいい。
考えるしかないから、考える。

編集とは、橋を架けることだと思う。

人と人、人とモノ(オーディオ)、人と音楽、人と社会、人と時代の間に橋を架けることだ。
その橋は一方通行では、意味をなさない。

そして編集に必要なものは何か、とも考える。

「思いやり」である。
この気持ちを失えば、もうジャーナリズムではなく羽織ゴロでしかない。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その13)

マーク・レヴィンソン自身はアンプの技術者ではない。
だから、マークレビンソンのアンプには3人の男が関わっている。

ひとりめは、LNP1、LNP2の初期ロットやLNC1(LNC2の前身)に採用されたモジュールの設計者、
リチャード・S・バウエン(ディック・バウエン)だ。

ふたりめはLNP2の自社製モジュールの設計、ヘッドアンプのJC1、
薄型コントロールアンプの流行をつくったJC2を手がけたジョン・カール。

最後のひとりは、ML7Lの設計者として、はじめて名前が明かされたトム・コランジェロ。

マークレビンソン・ブランド初のパワーアンプML2Lの設計者は、当初、マーク・レヴィンソンだと伝えられた。
かなり後になり、ML2Lは、トム・コランジェロを中心としたチームの設計だと訂正された。

だがジョン・カールは「ML2はJC3と呼ぶべきアンプ」だと主張する。

Date: 1月 21st, 2009
Cate: 4343, JBL, SX1000 Laboratory, Victor

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その46)

ビクターのZero-L10とSX1000 Laboratoryの間には、SX1000が存在する。

SX1000の登場は1988年、SX1000 Laboratoryは1990年。
この5年の間に、個々のユニット、エンクロージュアは細部が見直され、さらに聴感上のSN比は向上している。
エンクロージュアの仕上げも、カナディアンメイプル材をイタリアで染色するという、
凝ったツキ板の採用で、日本のスピーカーには珍しい雰囲気をまとっている。

だが、これ以上に外観の変化で目につくのは、スタンドにおいて、である。

SX1000は、LS1000という専用スタンドが別売りされていた。
このスタンドの構造は、基本的にはZero-L10のものは同じだ。

それがSX1000 laboratoryではインディペンデントベースという名の専用スタンドが、最初から付属している。
SX1000 laboratoryは、エンクロージュアの底面も、他の面と同じ仕上げが施されている。
いわゆる6面化粧仕上げで、大型のブックシェルフ型に分類されるだろうが、
実際にはインディペンデントベースと一体で開発されたものだけに、
この専用ベース込みでの、中型フロアー型と見るべきだ。

このインディペンデントベースの構造は、LS1000とは、まったく異っている。

Date: 1月 20th, 2009
Cate: 川崎和男

いのち・きもち

川崎先生の「いのち、きもち、かたち」を言い換えるとしたら、

「きもち」は「喜怒哀楽」、
「いのち」は「運命、宿命、天命、使命」か。

「かたち」は……。

Date: 1月 20th, 2009
Cate: Digital Integration

CD登場前夜は……

CD(というよりもデジタル)時代の到来によって、音の差がなくなるようなことが、一部で言われていた。

デジタル・イコール・画一化の技術だと思っていたのだろうか。
もちろん、とんでもない話だとほとんどの人が思っていたし、
もし仮にD/Aコンバーターに、各社の性能差がまったくなかったとしても、
それ以降のアナログ部が各社違うのだから、そんなことはありえないのに。

そんなことが言われたときから、今年で27年になる。

CDに続き、DATが登場し、ソニーのMDやフィリップスのDCCというのもあった。
パーソナルコンピューターの普及によって、MP3というフォーマット、
圧縮音源のフォーマットも、さらにいくつか登場している。

CDは16ビット、44.1kHzのPCM信号だったのに対し、DSD信号が出てきた。
PCMに関しても、よりスペックが上の、24ビット、96kHzなどもある。

CDだけ見ても、金蒸着CDが登場し、ガラスCD、それに最近各社から出ている新素材によるモノがある。
パッケージメディアも、CD、SACD、DVD-Audio、Blu-Ray Audioがあり、
デジタル配信も話題になっている。

iPodの存在も無視できない。そのiPodもハードディスク内蔵のモノと、メモリーのモノがある。

いったい、どれだけの人が、これだけデジタルの種類が増えることを予想しただろうか。
おそらく、ひとりもいないだろう。

いま、オーディオがコンピューターに寄り添おうとしている。
なぜ、オーディオが寄り添うのか。
コンピューターが寄り添う在りかたこそ、論じられることだと思う。