Archive for category 名器

Date: 12月 13th, 2010
Cate: 名器

名器、その解釈(その3)

そう、ほとんどの機種は、感覚的にも直感的にも名器だと納得できる。
それはステレオサウンド 50号を最初に読んだとき、まだ16歳だったけれど、
それぞれの写真から伝わってくるもの、それぞれの筆者の書かれたものから伝わってくるのはわかった。

それでもJBLのオリンパスS7R、ARのAR3aは、これもなのか……と思うところも正直あった。

オリンパスが選ばれるのであれば、なぜ同じJBLのハークネスがないのか。
柳沢氏の文章を読んでも、完全には納得できなかった。
私は、オリンパスよりもずっとハークネスが、スピーカーシステムとして美しいと思っている。
それにハークネスは、JBLのスピーカーシステムとしてはじめて左右対称に作られたモノでもある。
ステレオ再生ということを念頭に置いて作られた、それほど大きくもなく、
いま見ても美しいスピーカーシステムが、ない。

オリンパスに較べるとAR3aは、まだ納得がいく。
ARのスピーカーシステムが登場した時代を体験しているわけではないが、
それでもいくつか、このころについて書かれた文章を読めば、
ARのアコースティックサスペンション方式のもたらした衝撃がどれほど大きかったのかは理解できる。
ブックシェルフ型スピーカーは、ARがつくりだした、ひとつのジャンルであるのだから。
だから、頭では理解できる……。

あとひとつあげれば、マッキントッシュのMC240。
MC3500、MC275が選ばれているし、この2機種と比較すると、
なんとなく影が薄い、そんな存在のMC240がなぜ選ばれているの? という疑問がないわけじゃない。
それでも、理解できないわけでもない。

ステレオサウンド 50号が出たのは、31年前。
いま同じ企画を行ったら、それでも50号で選ばれたオーディオ機器の多くは、また選ばれるだろう。
そして、何が加わるのだろうか。

Date: 12月 12th, 2010
Cate: 名器

名器、その解釈(その2)

ステレオサウンド 50号の旧製品 State of the Art 賞の扉にはこう書いてある。
     *
往年の名器の数々の中から、〝ステート・オブ・ジ・アート〟賞に値する製品を選定していただいた。
以下に掲載した製品がその栄誉ある賞を獲得した名器たちであるが、いずれもその後のオーディオ製品に多大な影響を与えた機種であり、また今日のオーディオ発展のための大きな原動力ともなったものである。ここではこれらの名器がなぜ名器たり得たのか、そこに息づいているクラフツマンシップの粋、真のオーディオ機器の精髄とは、を探っている。
     *
ここには名器という言葉の他に、クラフツマンシップの粋、という言葉もある。

古い読者の方なら「クラフツマンシップの粋」ときいて、
このころステレオサウンドに連載されていた同盟の記事を思いだされるはずだ。
「クラフツマンシップの粋」の1回目は37号(1975年12月発売)に載っている。
とりあげられているのはマランツの#7、#9、#10B。
2回目は38号。JBLのSG520、SE400S、SA600。3回目は39号で、ガラード301、トーレンスTD124。
4回目は41号。JBLのハーツフィールド。
5回目は43号、QUADの管球アンプ、6回目は44号、アンペックスのデッキ。
7回目は45号でエレクトロボイスのパトリシアン・シリーズ、
8回目(最終回)はノイマンDSTなどのカートリッジだ。

この「クラフツマンシップの粋」でとりあげられたオーディオ機器は、
ほとんど旧製品 State of the Art 賞として選ばれている。

50号で掲載されているの機種は以下のとおり。カッコ内は執筆者。
●スピーカーシステム
 エレクトロボイス Patrician 600(山中)
 JBL D30085 Hartsfield(柳沢)
 タンノイ Autograph(岡)
 KEF LS5/1A(瀬川)
 シーメンス Eurodyn(長島)
 JBL Olympus S7R(柳沢)
 ローサー(ラウザー) TP1(上杉)
 AR AR-3a(岡)
●スピーカーユニット
 ウェスターン・エレクトリック 594A(山中)
 グッドマン AXIOM 80(瀬川)
 ジェンセン G610B(長島)
●コントロールアンプ
 マランツ Model 7(山中)
 JBL SG520(菅野)
 フェアチャイルド Model 248(岡)
●パワーアンプ
 マランツ Model 9(長島)
 マッキントッシュ MC3500(山中)
 マッキントッシュ MC275(菅野)
 マッキントッシュ MC240(上杉)
 マランツ Model 2(井上)
 QUAD QUAD II(岡)
 ラックス MQ36(井上)
●FMチューナー
 マランツ Model 10B(長島)
●プレーヤーシステム
 EMT 927Dst(瀬川)
●ターンテーブル
 ガラード 301(柳沢)
 トーレンス TD124(岡)
 T.T.O R-12(瀬川)
●カートリッジ
 ノイマン DST(山中)
 デッカ MKI(岡)
●トーンアーム
 SME 3012(瀬川)
 グラド Laboratory Tone-Arm(瀬川)

ほとんどが、名器として個人的にも納得できるモノばかりである。

Date: 12月 11th, 2010
Cate: 名器

名器、その解釈(その1)

「名器」と呼ばれるモノが、どんなジャンルにおいてもある。
もちろんオーディオにも、名器と呼ばれたモノは、いくつもあった。

名器と呼ぶにふさわしいオーディオ機器とは、いったいどういうものなのだろうか。
一流品、高級品と呼ばれるものが、名器とはかぎらない。
名器は一流品ではあっても、必ずしも高級品(高額品)ではない。

あれは名器だ、といったことを口にすることもあるし、耳にすることもある。
納得できるときもあれば、口に出して反論はしないまでも首を傾げたくなるときもある。
私が名器としているモノを、ある人はそうは受けとっていないかもしれないし、また反対のこともある。
そういうモノは、果して名器と呼べるのか。
すくなくとも名器と呼ばれる以上は、私も他の人も、ほとんど多くの人が認めるモノでなくてはならないのだろうか。
そんなモノ、そういう名器は存在してきただろうか。

そして、ずっと名器の名を欲しいままにしてきたモノは、あるのだろうか。

1978年の暮に出たステレオサウンド 49号の特集は”State of the Art” 賞だった。
その2年前の41号で、コンポーネントステレオ 世界の一流品、という特集をやっているのが、
49号の前身ともいえる。

State of the Art は数年後に Component of the year 賞に名称がかわり、
さらにステレオサウンド・グランプリとなり、現在も年末に出る号の特集として定着している。
これらの号で取り扱っているのは現行製品だけだが、49号のすぐあとに出た50号は、
ステレオサウンド創刊50号記念特集として、栄光のコンポーネント 旧製品 State of the Art として、
過去の製品、スピーカーシステムではJBLのハーツフィールド、タンノイのオートグラフ、
エレクトロボイスのパトリシアン600、マランツ、マッキントッシュの管球アンプ、
ガラード301にトーレンスTD124、ノイマンのDSTなどが選ばれている。

この50号に登場するモノは、ステレオサウンドの筆者が選んだ「名器」といえる。