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Date: 9月 9th, 2011
Cate: BBCモニター, LS3/5A, 瀬川冬樹

BBCモニター考(LS3/5Aのこと・その10)

すこし横道にそれてしまうけれど、
ステレオサウンド 46号に「マーク・レビンソンHQDシステムを聴いて」という、
瀬川先生の文章が2ページ見開きで載っている。

当時、ステレオサウンドの巻末に近いところで、このページを見つけたときは嬉しかった。
マークレビンソンのHQDシステムの試聴記が、ほかの誰でもなく瀬川先生の文章で読めるからだ。

マークレビンソンのHQDシステムについて知っている人でも、実物を見たことがある人は少ない、と思う。
さらに音を聴いたことのある人はさらに少ないはず。

私も実物は何度か見たことがある。
秋葉原のサトームセンの本店に展示してあったからだ。
いまのサトームセンからは想像できないだろうが、当時はオーディオに力を入れていて、
HQDシステムがあったくらいである。
サトームセン本店以外では見たことがない。

ただ残念なことに音が鳴っていたことはなかった。
「聴かせてほしい」といえるずうずうしさもなかった。

ステレオサウンド 46号の記事は、サトームセンで見る3年ほど前のこと。
そのときは実物をみることすらないのではないか、と思っていたときだった。

わくわくしながら読みはじめた。
ところが、読みながら、そして読み終って、なんだかすこし肩透しをくらったような気がした。
だから、もういちどていねいに読みなおしてみた。

でも、私が勝手に期待していたわくわく感は得られなかった。

Date: 9月 7th, 2011
Cate: BBCモニター, LS3/5A

BBCモニター考(LS3/5Aのこと・その9)

山中先生は、この点どうかというと、パトリシアン600を使われていることからもわかるように、
背の高いスピーカーシステムに対して、瀬川先生のように拒否されるところはないわけだが、
以前書いたように、QUADのESLを、ぐっと思いきって上にあげて前に傾けるようにして聴くといいよ、
と、ESLを使っているときにアドバイスしてくださったことから、
むしろ瀬川先生とは反対に背の高いスピーカーシステム、
もしくは目(耳)の高さよりも上から音が聴こえてくることを好まれていたのでないか、とも思う。

スピーカーシステムの背の高さ(音が出る位置の高さ)を強く意識される方もいれば、
ほとんど意識されない方もいる。
これはどうでもいいことのように思えても、スピーカーシステムの背の高さを強く意識されている方の評価と、
そうでない方の評価は、そこになにがしかの微妙な違いにつながっていっているはず。

だから、なぜその人が、
そのスピーカーシステムを選択されたのか(選択しなかったのか)に関係してくることがあるのを、
まったく無視するわけにはいかないことだけは、頭の片隅にとどめておきたい。

メリディアンのM20もQUADのESLも、そのまま置けば仰角がつく。
フロントバッフル(もしくはパネル面)がすこし後ろに傾斜した状態になる。
これは何を意味しているのか、と思うことがある。
そして、メリディアンのM20をつくった人たち、QUADのピーター・ウォーカーは、
どんな椅子にすわっていたのか、とも思う。
その椅子の高さはソファのように低いものなのか、それともある程度の高さがあるものなのか。

私の勝手な想像にすぎないが、椅子の高さはあったのではないか、と思っている。
このことはESL、M20がかなでる音量とも関係してのことのはずだ。

Date: 9月 6th, 2011
Cate: BBCモニター, LS3/5A

BBCモニター考(LS3/5Aのこと・その8)

井上先生は「見えるような臨場感」、「音を聴くというよりは音像が見えるようにクッキリとしている」と、
瀬川先生は「精巧な縮尺模型を眺める驚きに緻密な音場再現」、
「眼前に広々としたステレオの空間が現出し、その中で楽器や歌手の位置が薄気味悪いほどシャープに定位する」、
こんなふうに表現されている。

どちらも視覚的イメージにつながる書き方をされている。
それこそガリバーが小人の国のオーケストラや歌手の歌を聴くのと同じような感覚が、そこにはある。
いうまでもなく、これは正しくLS3/5Aを設置して、正しい位置で聴いてこそ得られるものであって、
いいかげんな設置、いいかげんな位置で聴いていては、このような音場感は得られないし、
そうなるとLS3/5Aはパワーも入らないし、低域もそれほど低いところまでカヴァーできないし……など、
いいところなどないスピーカーシステムのように思われるだろうが、
それは鳴らし方・聴き方に問題がある、といえる。

とにかく、そういうLS3/5Aが小音量時に聴かせてくれる、
「見えるような臨場感」を、私は、LS3/5Aをすこしばかり上から眺めるような位置で聴きたい、と思う。

スピーカーシステムの位置と耳の位置の、それぞれの高さの関係については、
使っているスピーカーシステムによっても、その人の聴き方にも関係してくることであって、
ここには正解は存在しない、といえる。

たとえば瀬川先生は、背の高いスピーカーシステムを好まれない。
というよりも、音楽之友社から出ていた「ステレオのすべて」の1976年版のなかで、
菅野先生、山中先生との鼎談「オーディオの中の新しい音、古い音」でこう語られている。
     *
たとえば見た目から言ったってね、ぼくはご在じの通りね、昔から背の高いスピーカー嫌いなんです。どうしても目の高さよりね、音の出て来る位置が高くなっちゃうとね、なんだか全然落ち着かないわけね。これは本当に、この部屋に入って来て座った時から、見れば見るほど、ますます大きくなっていく感じがするわけね。すごい背が高い。
 ちっとも小さくならない、慣れても。たとえばこういう大きいスピーカーだったらぽくはどうしたって横倒しにしちゃいたいぐらいの感じです。これは横倒しにできないスピーカーだけれども。
     *
ここで語られている「この部屋」とは山中先生のリスニングルームであり、
「横倒しにしちゃいたい」スピーカーシステムは、エレクトロボイスのパトリシアン600のことである。

Date: 9月 5th, 2011
Cate: BBCモニター, LS3/5A

BBCモニター考(LS3/5Aのこと・その7)

CDの登場は、アナログディスクにはつきものであったサブソニックから解放されたことであり、
LS3/5Aにかぎらず、1970年代に開発されたBBCモニタースピーカーに共通してあった耐入力のなさは、
ある程度解消されていった。
あきからにLS3/5Aから得られる音量は、CDによって増していた。
もっとも、増した、といっても、あくまでもLS3/5Aでの話ではある。

CDの普及とともに、LS3/5Aサイズの小型スピーカーシステム用のスタンドがいくつか出はじめたことも関係してか、
LS3/5Aは、CD登場以前とは異る聴き方がされるようになってきた。

それまでは(アナログディスク時代)は、スタンドは使わず、
しっかりした造りの机の上に、手の届く距離に置いて聴く、というスタイルが多かったのではないだろうか。
すくなくとも私は、瀬川先生や井上先生がLS3/5Aについて書かれたものを読んで、
そういう使い方をイメージしていた。

こういう置き方を含め、低域の適切なコントロールなど、
制限された使いこなしの中でうまく鳴らしたとき、LS3/5Aの魅力は最大に発揮される──、
こんなふうにも思っていた。

実際にそうやって聴くLS3/5Aのひっそりとした親密な空気をかもしだす雰囲気は、
聴く音楽も音量も聴取位置も限定されるけれど、そんなことを厭わず鳴らしたときの魅力は、
何度でも書きたくなるほどのものを、私は感じている。

でも、いい変えれば、やや面倒なスピーカーシステムといえなくもなかったのが、
CDの安定した低域によって、すこしばかり気軽に鳴らせるようになった。

いまLS3/5Aをお使いの方は、スタンドに乗せて、という方が多いのかもしれない。
けれども、私にとっては、机の上に置くスピーカーシステムであり、
つまりこのことはスピーカーを上から眺めるようなかたちで聴く、ということでもある。

Date: 9月 5th, 2011
Cate: BBCモニター, LS3/5A

BBCモニター考(LS3/5Aのこと・その6)

CDが登場する以前、アナログディスクがメインのプログラムソースであったころには、
LS3/5Aを鳴らすコツのひとつとして低域の適切なコントロールがあげられていた。
サブソニックによってLS3/5Aの小口径のウーファーがフラフラしていたら、
ただでさえ耐入力不足のところに、さらに不利な再生条件になってしまう。

ステレオサウンドでの組合せでQUADの405がよくとりあげられていたのも、このことが関係している。
405は大出力になると低域をカットするような設計になっている。
同じことは管球式パワーアンプについても、いえる。
アウトプットトランスを背負っていないOTLアンプは関係ないが、
アウトプットトランスの性格上、管球式パワーアンプの周波数特性をみると、
1W出力時と定格出力時とでは、低域のカットオフ周波数が、定格出力時ではどうしても高くなってしまう。
これはアウトプットトランスの性格上避けられないことでもある。

1982年にラジオ技術別冊として出た「集大成 真空管パワー・アンプ」の巻頭に、
管球式パワーアンプ15機種の回路図と実測データが載っている。
QUAD II、サンスイ AU111、ダイナコ MKIII、ダイナベクター DV8250、テクニクス 20A、40A、
デンオン POA1000B、フッターマン H3、マイケルソン&オースチン TVA1、マッキントッシュ MC275、MC3500、
マランツ Model 98、ラックス MQ36、MQ68C、SQ38FD。
測定を担当されたのは、オーディオノートの創設者、近藤公康氏。

これら15機種のなかでOTL方式なのは、テクニクスの20A、ラックスのMQ36、フッターマンのH3だけで、
残り12機種はすべてアウトプットトランスをもつ。

周波数特性は1W出力時、10W出力時、定格出力時の3つのデータが載っている。
出力に余裕があるアンプ、もしくは設計の新しいアンプでは、
!W出力時と10W出力時の周波数特性はほぼ同じか、すこしだけ低域のカットオフ周波数が上昇する傾向があるが、
小出力のものでは1Wと10W出力時でもずいぶんカットオフ周波数が違うものがあり、
定格出力時では200Hzあたりから低域のレスポンスが下降していくアンプもある。

ソリッドステートの優秀なパワーアンプの周波数特性と比較すると、
なんというひどい周波数特性なんだ、ということになりそうだが、
LS3/5Aのようなスピーカーシステムにとっては、これはむしろいい方向に働くこともある。

Date: 9月 4th, 2011
Cate: BBCモニター, LS3/5A

BBCモニター考(LS3/5Aのこと・その5)

メリディアンのM20はパワーアンプ内蔵の、メリディアンがアクティヴラウドスピーカーシステムと呼ぶもので、
使用ユニットはウーファーが11cm口径のベクストレン・コーン型、トゥイーターは35mm口径のソフトドーム型で、
トゥイーターを2発のウーファーで挟み込むインライン配置、つまり仮想同軸配置を採用している。
内蔵パワーアンプはウーファー用が70W、トゥイーター用が35Wの出力によるバイアンプ仕様。

見た目はこれといった特徴的なところはない、地味な印象のほうが強いスピーカーシステムだから、
期待はほとんどしていなかった。
だから、音が鳴ってきた瞬間に、M20が醸し出す、いい雰囲気の音に、どきっとした。
LS3/5Aの音をスケールアップした音が、いまここで鳴っている──、
その事実に、とにかく嬉しくなった。

実は試聴の前に、サランネットを外してユニットを見たわけではなかった。
もともと期待していなかったスピーカーシステムだったから、
サランネットを外すことなく音を聴くことになったわけで、だからこそ驚きは大きかった。

試聴が終り、好奇心からネットを外すと、そこにはLS3/5Aで見慣れたウーファーがあった。

ウーファーのメーカーについては発表されていないが、あきらかにKEFのB110である。
LS3/5Aと同じウーファーを奥行きが38cmと、かなり深いバスレフ型エンクロージュアにおさめている。
内容積は、LS3/5Aにくらべかなり余裕をもったものとなっている。

トゥイーターはLS3/5Aに搭載されているKEFのT27ではないが、
これも見た目から判断するとKEFのユニットだと思われる。

KEFの105のような厳格さは、メリディアンのM20にはない。
もっと音楽を楽しんで聴く、という目的のためには、
結果として、わずかな音の演出を認めているようにも聴き手には感じられるM20の音は、
艶っぽく、底光りする音で、品位も高く、LS3/5Aには求められなかったスケール感がある。

そのスケール感は大型フロアー型のようなスケールの大きさではないけれど、
当時(1980年代まで)のイギリス的な家庭で楽しむ音量としては、充分なスケールがあった。

いま、この音を聴かせてくれたM20(現物)を、そのまま持ち帰りたくなるくらい、
私にとってはLS3/5Aの、正しく延長線上にあるスピーカーシステムだった。

Date: 9月 3rd, 2011
Cate: BBCモニター, LS3/5A

BBCモニター考(LS3/5Aのこと・その4)

Reference Systemは一度聴いてみたかった。
XA75に内蔵されているパワーアンプではなく別途、サブウーファー用にパワーアンプを用意すれば、
より高品質な音が得られる可能性は、Reference Systemにはあったことだろうが、
写真でみるかぎりでは、大型エンクロージュアの上に、ポツンとLS3/5Aが乗っかっている感じで、
システムとしてのまとめ方のよさ──
しかもそれがロジャース純正であるだけにそういったことをより強く求めたくなるものだが──、
残念ながら備えていなかったように思える。

LS3/5Aのよさをいささか損なうことなく、スケール感をもうすこし欲することは無理な要求なのだろうか……。
KEFの105(Uni-Qユニット採用の105ではない)は、
それに近い印象を受けていたけれど、LS3/5Aの底光りする品位の良さまでは、
KEFの音は磨きあげられていないようも感じた。
105も、もちろん高品位でこれ単体で聴いている分には、その点に関しては申し分なく感じけれども、
すこし厳格すぎる性格、というか真面目すぎる性格が禍しているのだろうか、
音楽をより魅力的に響かせる方向での音の磨き方ではないようなところがある。

LS3/5Aの音には、私は、磨かれることで底光りしている音は、黒光りしている、とも感じている。
この光りの感じに、私は惚れてきたところがある。

だから、この磨きあげられることで生れてくる光りが音の中にはあり、
あとすこしのスケール感を……、ということになると、
そう難しくはないようなことに思えがちだが、意外に、そういう要求を満たしてくれるスピーカーシステムは少ない。

私がステレオサウンドにいたころ、ひとつだけ出合えた。
メリディアンのM20である。

Date: 9月 3rd, 2011
Cate: BBCモニター, LS3/5A

BBCモニター考(LS3/5Aのこと・その3)

LS3/5A──、私にとってのLS3/5Aは最初に聴いたものも、
そののち手に入れたものもロジャースの15Ωタイプだったので、
私にとってのLS3/5Aといえば、ロジャース製のモノということになる。

ロジャースのLS3/5Aが、
パワーに弱い(音量を上げられない)、低音は出ないなどのいくつかの欠点をもっていながらも
日本では高い評価と人気を獲得したこともあってなのかどうかははっきりとしないが、
イギリスの各スピーカーメーカーからも、LS3/5Aが登場した。
KEF、スペンドール、チャートウェル、オーディオマスターなどがある。
これらすべて同一条件では聴いたわけではないし、チャートウェルのLS3/5Aは聴いたこともない。

同じ規格でつくられてはいても、製造メーカーが異るとLS3/5Aの音も微妙に違ってくる。
LS3/5Aに高い関心をもつ者にとっては、
どのLS3/5Aが音がいいのか、もしくは自分の求める音に近いのかが気になるところだろうが、
私はといえば、それぞれのメーカーの音の差に関心はあるけれど、
それでも私にとってのLS3/5AはロジャースのLS3/5Aであり、
ロジャースのLS3/5Aは他社製のLS3/5Aよりも、多少劣る面を持っていたとしても、
それはそれでいいではないか、と思っているところがある。

私が気になるのは、LS3/5Aそれぞれの音の違いではなくて、
LS3/5Aの良さを受け継いで、あとほんのすこしスケール豊かに鳴ってくれるスピーカーシステムに関して、である。

LS3/5Aの欠点を解消するために、ロジャースからはサブウーファーが2度、登場している。
最初はL35Bと呼ばれるもので、33cm口径のウーファーをW46×H83×D42cmの密閉型エンクロージュアにおさめ、
このエンクロージュア上部の指定された位置にLS3/5Aを置くようになっている。
LS3/5Aとのクロスオーバ周波数は150Hzで、
専用のエレクトロニック・デヴァイディングネットワークXA75にはパワーアンプも搭載されており、
L35BとXA75、そしてLS3/5Aによるシステムを、ロジャースはReference Systemと名づけていた。
1978年の製品だ。

2度目は、1990年代なかばごろに登場したAB1がある。
このモデルはLS3/5AのウーファーB110を採用し、シンメトカリーロデット方式とよばれるエンクロージュアを採用、
このサブウーファーの出力は、B110から直接ではなく、
エンクロージュア上部サイドに設けられているポートから、となっている。
AB1にはLS3/5A用の出力端子が備えられていて、バイアンプ仕様のReference Systemとは異り、
それまでLS3/5Aを鳴らしてきたシステムにそのまま組み込める簡便さをもっていた。

Date: 8月 31st, 2011
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その25)

ベーゼンドルファーのVC7は、録音(演奏)された場が、どういうところなのかを、
その響きの違いでしっかりと提示してくれる。
このことは、スピーカーシステムのどういう能力と関係することなのだろうか。

木で造られた教会か石で造られた教会なのかの違いは、
マイクロフォンが収録する間接音成分によってわれわれは聴き分けている。
マイクロフォンがとらえる楽器や歌手からの直接音には、その録音(演奏)の場に関する情報は含まれていない。
そういう場の情報は、マイクロフォンにはいってくる間接音に含まれている。

だからVC7が響きへの対応の柔軟性の確かさを高く評価しているけれど、
もともとの録音に、「場」に関する音的情報が収録されていなければ、
どんなスピーカーシステムをもってこようと、聴き分けることはできない。

録音における直接音と間接音のレベル的な比率は、いったいどのくらいなのだろうか。
マイクロフォンが楽器に近ければ近いほど直接音の比率が高くなり、間接音の比率は低くなる。
楽器とマイクロフォンとの距離が離れていくほど、間接音の比率は上ってくる。
ここまでははっきりといえても、マイクロフォンの設置場所やその場の広さやつくりなどによって、
直接音と間接音のレベル的な比率はさまざまであろうから、この程度だという具体的なことはいえない。

それでも大半の録音では直接音のレベルのほうが高い。
それに間接音には1次反射だけでなく、2次反射、3次反射……とある。
反射の次数が増えていくほどレベルは低くなる。

ただ録音(演奏)の場の壁が木なのか石なのか、
そういう違いは1次反射にそれに関する情報量が多く含まれているのか、
意外に2次反射、3次反射のほうがレベル的には低くなっても、
壁の材質に関する情報は逆に増えているのかもしれない。
それともまた別の要素があって、それも絡んでのことなのだろうか……。

このへんになると不勉強ゆえ、これ以上のことはなにも書けないけれど、
響きの鳴らし分けに関しては、レベル的には低いところのスピーカーの鳴りが大いに関係しているように思えるし、
それはただ単に微小入力へのリニアリティが優れていることだけではなさそうである。

Date: 8月 24th, 2011
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その24)

ベーゼンドルファーVC7の開発者は、
「カンターテ・ドミノ」のCDをかけ終った後に、
「これが録音されたのは木造りの教会で、そのことが響きとして表現されていたでしょう」といい、
「今度は石造りのところで録音されたCDをかけます」といった。

「カンターテ・ドミノ」の次にかけられたのが何のCDだったかは失念してしまったが、
VC7の開発者がいったように、そこで鳴っていた響きは、「カンターテ・ドミノ」のときとは違う。
録音が行なわれた建物が「カンターテ・ドミノ」の教会とはあきらかに違うことは、響きの違いとして顕れていた。

「カンターテ・ドミノ」が木の教会の響きでなっても、
そうでない場所で録られた録音までも「カンターテ・ドミノ」的な響きで鳴らされては困る。
どんなに「カンターテ・ドミノ」がうまく鳴ったところで、
それは「カンターテ・ドミノ」の録音状況に合っていたということで、
VC7が優れたスピーカーシステムということにならないわけだが、「カンターテ・ドミノ」を聴きながら、
じつはそのことがすこし気になっていたのだ。

もし石造りの建物で録音されたCDまで木の教会の響きで染めてしまったら、VC7への興味は失ってしまうかも……と。

どうもVC7は、日本では、試聴に限定条件がついてまわるスピーカーシステムとして思われている気がしていたし、
そのことを、私自身も、しっかりと確かめたかったから、2008年のノアのブースで聴くことができた2枚のCDは、
私のそんな杞憂をきれいに吹き飛ばしてくれた。

VC7は高価なスピーカーシステムだし、同じ価格を出せば、優れたスピーカーシステムを購入できる。
そういった優秀なスピーカーシステムと直接比較すると、いくつかの点でもの足りなさを感じることはあろう。
それでもVC7の、響きへの対応の柔軟性と見事さは、
そういった優秀なスピーカーシステムではなかなか得にくいものであることもたしかだ。

音楽における響きとはなんなのか、オーディオにおける響きとはなんなのか。
響きについて、なにかを学べるスピーカーシステムとして、私はベーゼンドルファーのVC7を高く評価している。

Date: 8月 23rd, 2011
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その23)

スウェーデンのプロプリウスから発売されている「カンターテ・ドミノ」が録音されたのは1976年、
テープレコーダーはルボックスのA77で、ワンポイント録音。

A77は、スチューダーのプロ用機器とは違い、あくまでコンシューマー用のデッキ。
それで録音されたものが、いまでも優秀録音の一枚として、いまでも試聴レコードとして使われている。

2008年のインターナショナルオーディオショウでのノアのブースでのベーゼンドルファーVC7が鳴らされたときも、
「カンターテ・ドミノ」が使われていた。

VC7を鳴らすためのディスクを選んでいたのは、VC7の開発者だった。
実は、このときのVC7の音を聴いて、さらに惚れ込んでしまった。

VC7からの「カンターテ・ドミノ」の響きには、木の響きが感じられたからだ。

欧米の教会が身近にない環境で育っているためか、
「教会」ときくと、テレビや映画によく出てくるような石造りの建物を私などは連想してしまいがちだが、
「カンターテ・ドミノ」の録音に使われた教会は、そういう石造りの教会ではなく木造りの教会だ。
だから、「カンターテ・ドミノ」では、そういう木造りの教会の響きがしてこなければ、おかしいということになる。
石造りの教会を連想させる響きでは、「カンターテ・ドミノ」を十全に再生できた、とはいえないことになる。

井上先生は、よく「カンターテ・ドミノ」を試聴に使われた。
「カンターテ・ドミノ」で何度もかけながら細かい調整をされていく。
すると、途中であきらかに響きの質が変化するときがある。
響きがあたたかくやわらかい感じになる。
このことを井上先生にきいてみると、「それは木の教会だからだよ」と教えてくれた。

VC7の開発者も、同じことを言っていた。

Date: 8月 22nd, 2011
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その22)

鉄を目の敵にするのは、正直どうかと思う。
鉄が悪いわけではなく、その人の使い方に鉄が向いていなかっただけの話ではなかろうか。

私は、優れた鉄のもつよさは、積極的に認めたいほうだ。
ただTAD(パイオニア)がTL1601cの製造をやめてしまったのは、鋳鉄フレームを自社生産することはできず、
外注に出していたのだが、その外注先がなくなってしまい、
同じクォリティの鋳鉄フレームがもう造れなくなってしまったから、ときいている。

TADはパワーアンプのM600に鋳鉄ベースを採用している。
ということは、腕のいい職人のいる外注先が見つかった、ということなのだろう。
となるとTL1601cの復活もあるかしれない、と実はすこし期待している。

ベーゼンドルファー(ヤマハに買収された後スピーカー製造部門は独立し、現在はBrodmann Acoustics)のVC7、
ウーファーのフレームが鉄製であることは、すでに書いた。
それが安もののユニットに多く採用される薄い鉄板フレームなのか、
それともピアノのフレームやTADのTL1601cと同じく鋳鉄製なのかは、はっきりとしない。
ただ音を聴いていると、なんとなく鋳鉄製であってほしい、と思っているわけだ。

私の予想・予感が外れて鉄板のフレームだったとしても、
それで、あの響きを出しているのだから、それはそれで感服することになる。

なぜか日本ではVC7の評価は、低い。
最初ベーゼンドルファーのスピーカーシステムとして出たことも大いに関係しているのだろうが、
ピアノがうまく鳴るスピーカー、といった程度にしか受けとめられていないのではなかろうか。

ピアノはうまく鳴る。でもそれだけのスピーカーシステムではない。
VC7の良さは、響きの再現性にある。

Date: 8月 22nd, 2011
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その21)

どこかのピアノメーカーが、鉄フレームとアルミフレーム以外は、
あとはまったく同一というピアノをつくってくれて、その比較試聴ができればいいのだけれど、
そんなことをやるピアノメーカーはないから、
想像で書くしかないのだが、おそらくアルミフレームのピアノと鉄フレームのピアノとでは、
響きの芯の確かさ、と表現したくなる要素が大きく違ってくるのではないだろうか。

どんな材質にも、その材質特有の固有音がある。
固有音のないものは世の中には存在しないし、鉄には鉄ならではの固有音があり、
アルミニウムにはアルミニウムならではの固有音があり、
固有音をうまく音に活かせれば、いい意味での個性になり、
扱い方をあやまるとクセとなり、耳につきわずらわしく感じられることになる。

鉄とアルミニウムは、オーディオにもっとも多く、長く使われてきている金属の代表でもある。
見た印象が鉄とアルミニウムとは違うし、叩いたときの固有音も似ているとはいえない。
それにアルミニウムは非磁性体、鉄は磁性体という、ピアノでは関係ない要素も、
オーディオには音に関係してくる要素となる。

いまでもそうだがプロ用の器材には、鉄板のシャーシのものが意外と多い。
コンシューマー用のオーディオ機器のようにアルミニウムを贅沢に使ったものはほとんどない、といっていいはず。

以前、井上先生からきいた話だが、プロ用器材に共通する開放感がある音は、
アルミニウムでがっちりつくってしまうと、意外にどこかにいってしまう、ということだった。

それに鉄とアルミニウムとではシールド材としても違う性格がある。
シールドできる周波数帯域が、鉄とアルミニウムとでは異る。
より広い帯域のノイズをシールドしたければ、どちらかひとつに絞るのではなく、
複数の金属をうまく組み合わせたほうがいい、ということだ。

Date: 8月 20th, 2011
Cate: Kingdom, TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その74)

JBL4343のウーファーとミッドバスの口径は15インチと10インチ、
タンノイのKingdomの弟分として登場したKingdom 15は、
型番の末尾の数字があらわしているようにウーファー口径がKingdomの18インチから15インチへ変更されている。
この変更にともないミッドバス、ミッドハイをうけもつ同軸型ユニットの口径も、
Kingdomの12インチから10インチと、ひとまわり小さくなっている。
コーン型のウーファーとミッドバスの口径は4343と同じになっている。

これは単なる偶然なのだろうか。

何度も書いている瀬川先生の、
ステレオサウンド別冊のHIGH-TECHNIC SERIES 1に掲載されていた4ウェイ構想の記事を読んだとき、
なぜJBLの4343のミッドバスは10インチであって、8インチにしなかったのか、と疑問に思ったことがあった。

ウーファーとのクロスオーバー周波数がかなり低いのであれば口径がある程度あった方が有利なのはわかるが、
4343では300Hzである。8インチ(20cm)口径のユニットでも十分だし、
口径が小さくなった分だけ中高域の特性はよくなるし、
瀬川先生の記事にもフルレンジの20cmから10cm口径の良質なものを選ぶことから始める、とあった。

そう思ったのは、いまから34年前の話。
4343への関心が強くなっていくほどに8インチじゃなくて、10インチを選択したことを自分なりに納得がいった。

4343(その前身の4341を含めて)が成功したのは、いくつかの要因がうまく関係してのことであろうが、
そのひとつにウーファーとミッドバス、
このふたつのコーン型ユニットの口径比は大きく関係している、と思っている。

だから、Kingdomが成功したのは、このウーファーとミッドバス(同軸型ユニット)の口径比のおかげだ、
という短絡的な断言はしないけれど、それでもこれ以外の口径比で成功はありえなかったはず、だ。

Date: 8月 13th, 2011
Cate: 40万の法則, D130, JBL, 岩崎千明

40万の法則が導くスピーカーの在り方(D130と岩崎千明氏・その11)

空気をビリビリと振るわせる。
ときには空気そのものをビリつかせる。

「オーディオ彷徨」とHIGH-TECHNIC SERIES 4を読んだ後、
私の裡にできあがったD130像が、そうだ。

なぜD130には、そんなことが可能だったのか。
空気をビリつかせ、コーヒーカップのスプーンが音を立てるのか。
正確なところはよくわからない。
ただ感覚的にいえば、D130から出てくる、というよりも打ち出される、といったほうがより的確な、
そういう音の出方、つまり一瞬一瞬に放出されるエネルギーの鋭さが、そうさせるのかもしれない。

D130の周波数特性は広くない。むしろ狭いユニットといえる。
D130よりも広帯域のフルレンジユニットは、他にある。
エネルギー量を周波数軸、時間軸それぞれに見た場合、D130同等、もしくはそれ以上もユニットもある。
だが、ただ一音、ただ一瞬の音、それに附随するエネルギーに対して、
D130がもっとも忠実なユニットなのかもしれない。
だからこそ、なのだと思っている。

そしてD130がそういうユニットだったからこそ、岩崎先生は惚れ込まれた。

スイングジャーナル1970年2月号のサンスイの広告の中で、こう書かれている。
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アドリブを重視するジャズにおいては、一瞬一瞬の情報量という点で、ジャズほど情報量の多いものはない。一瞬の波形そのものが音楽性を意味し、その一瞬をくまなく再現することこそが、ジャズの再生の決め手となってくる。
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JBL・D130の本質を誰よりも深く捉え惚れ込んでいた岩崎先生だからこその表現だと思う。
こんな表現は、ジャズを他のスピーカーで聴いていたのでは出てこないのではなかろうか。
D130でジャズで聴かれていたからこその表現であり、
この表現そのものが、D130そのものといえる。