Archive for category LNP2

Date: 2月 1st, 2009
Cate: LNP2, Mark Levinson

LNP2について(その4)

LNP2のブロックダイアグラムを見ると、
フォノアンプだけでなく、インプットアンプもアウトプットアンプも、
ある程度のゲインの高さが求められていることがわかる。

インプットアンプは、NFB量を変化させることでゲイン切り換えが可能になっており、
Lタイプになってからは、+20dBだったのが+40dBに変更されている。
NFBをある程度かけた状態での40dBのゲインは、中間アンプとしては、かなり高い設定である。

アウトプットアンプは、3バンドのトーンコントロールを備えているため、
トーンコントロールの増減分だけのゲインの余裕は最低でも必要となる。
ここも、ゲインは、それほど低くはない。

つまりLNP2は、かなりの余剰ゲインを持つ(オーバーゲインな)アンプなのだ。

Date: 2月 1st, 2009
Cate: LNP2, Mark Levinson

LNP2について(その3)

出力段は、JC2と同じFETのソースフォロワーかもしれない。
JC2は2パラレルプッシュプル構成だが、ジョン・カールがインタビューで答えているように、
LNP2のモジュールLD2には消費電力の制限があり、そのためA級動作にはなっていない。
つまり消費電力が増えるパラレルプッシュプルはありえない。
しかもAB級動作のはずだ。

JC2のフォノアンプと、LD2の回路構成は基本的に同じ可能性はあるだろう。
1974年に、そういくつもの回路のヴァリエーションを、ひとりの技術者が生み出すとは思えないからだ。

差動2段構成に、AB級動作のFETのソースフォロワー(もしくはトランジスターのエミッターフォロワー)つき、
これが私が推測するLD2の回路構成である。
LD2の大きさがJC2のフォノアンプモジュールに近いことも、理由のひとつである。

ジョン・カールが消費電力の点で苦労したというのも、うなずける。
差動回路を2段にすることで、使用トランジスターの数は、JC2のラインアンプよりも多くなっている。
それだけ消費電力は増えているわけだ。各段のアイドリング電流を極力抑える必要がある。
ただ、これがローノイズにうまく作用している面もあるだろう。

Date: 1月 31st, 2009
Cate: JC2, LNP2, Mark Levinson

LNP2について(その2)

ジョン・カールの設計思想として、それほどゲインを必要としない場合には、
差動回路を使っても初段のみである。
差動2段回路のJC2のフォノアンプは、ジョン・カール設計のアンプとしてはめずらしい。

JC2のフォノイコライザーはNF型イコライザーである。
RIAAカーブをNFBでつくり出している。そのためNFBループにコンデンサーが2つ使われている。
NFBがかけられているアンプはすべてそうだが、
次段のアンプの入力インピーダンスとともにNFBループ内の素子も負荷となる。
つまりNF型イコライザーアンプの負荷は容量性であり、
当然周波数の上昇とともにインピーダンスは低下していく。
それに対し安定した動作を確保するため、
JC2のフォノアンプの出力段はパラレルプッシュプル仕様となっているのだろう。

差動2段増幅になっているのも、このNF型イコライザーと関係している。
RIAAカーブは、1kHzを基準とすると、20Hzは+20dB、20kHzは−20dBのレベル差がある。
20Hzと20kHzのレベル差は40dBである。

20kHzのゲインを0dBとしても、20Hzでは最低でも40dBのゲイン(増幅率)は必要となる。
まして20kHzでゲイン0dBということはあり得ないから、
NFBをかける前のゲイン(オープンループゲイン)は、ある程度の高さが求められる。
ゲインの余裕がなければ、低域に十分なNFBがかけられなくなる。

十分なゲインを稼ぐための、差動2段増幅と考えていいだろう。

Date: 1月 31st, 2009
Cate: JC2, LNP2, Mark Levinson

LNP2について(その1)

マークレビンソンのLNP2のモジュールLD2の回路構成はどうなっているのか。

ジョン・カールにインタビューした時に聞いておけばよかった、と後悔しているが、
取材の目的はヴェンデッタリサーチについてだったので、仕方なかった。

私が持っているジョン・カールが設計したアンプの回路図は、
マークレビンソンのJC2、JC3、ディネッセンのJC80、
あとは自分で実物をみながら回路図をおこしたヴェンデッタリサーチのSCP1だけである。
このなかで、LNP2の回路を推測する上で、重要なのはJC2以外にないだろう。

LNP2はフォノアンプ、インプットアンプ、
アウトプットアンプのすべてに共通のモジュールLD2が使われているのに対し、
JC2は、フォノアンプとラインアンプは、モジュールの大きさも異るし、当然回路構成も大きく違う。
JC2のラインアンプは、初段のみ差動増幅の上下対称回路(2段増幅)、
JC3の電圧増幅部とほぼ同じといってよい。

フォノアンプは、上下対称回路ではなく、2段差動増幅回路になっている。
初段の差動回路の共通ソースには定電流回路が設けられ、
2段目の差動回路はカレントミラー負荷になっている。
出力段はFETによるプッシュプル回路で、しかもパラレル仕様である。

使用トランジスター数は、ラインアンプが6石(内FET4石)、フォノアンプは11石(内FET7石)となっている。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その13)

マーク・レヴィンソン自身はアンプの技術者ではない。
だから、マークレビンソンのアンプには3人の男が関わっている。

ひとりめは、LNP1、LNP2の初期ロットやLNC1(LNC2の前身)に採用されたモジュールの設計者、
リチャード・S・バウエン(ディック・バウエン)だ。

ふたりめはLNP2の自社製モジュールの設計、ヘッドアンプのJC1、
薄型コントロールアンプの流行をつくったJC2を手がけたジョン・カール。

最後のひとりは、ML7Lの設計者として、はじめて名前が明かされたトム・コランジェロ。

マークレビンソン・ブランド初のパワーアンプML2Lの設計者は、当初、マーク・レヴィンソンだと伝えられた。
かなり後になり、ML2Lは、トム・コランジェロを中心としたチームの設計だと訂正された。

だがジョン・カールは「ML2はJC3と呼ぶべきアンプ」だと主張する。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その12)

石清水を入力したのに、出てきたのは濁水だった……。
そこまでひどいアンプは、当り前だが存在しない。

でも石清水の味わいが失われて、蒸留水に近くなったり、
蒸留水に、ほんのわずかだが何かが加わって出てくる。
そういう精妙な味わいの変化は、アンプの中で起こっている。

完全な理想のアンプが存在しない以上、
アンプの開発者は、なにかを優先する。

ある開発者は、できるだけアンプ内で失われるものをなくそうとするだろう、
また別の開発者は、不要な色づけをなくそうとするだろう。

もちろん、その両方がひじょうに高いレベルで両立できれば、それで済む。
現実には、特にマーク・レヴィンソンがLNP2に取り組んでいたころは、
失われるものを減らすのか、それとも色づけをなくしていくのか、
どちらを優先するかで、つねに揺れ動いていても不思議ではない。

ふたつのLNP2を聴いて、私が感じていたのは、そのことだった。

バウエン製モジュールのLNP2は、失われるものが増えても、色づけを抑えたい、
マークレビンソン製のモジュールのLNP2Lは、できるだけ失われるものを減らしていく、
そういう方向の違いがあるように感じたのだった。

LNP2Lは失われるものが10あれば、足されるものも10ある。
LNP2は足されるものは5くらいだが、失われるものは15ぐらい、
少し乱暴な例えではあるが、わかりやすく言えば、こうなる。

水の話をしてきたから、ミネラルウォーターに例えると、
LNP2Lは硬水、LNP2はやや軟水か。水の温度も、LNP2Lのほうがやや低い。

これは、どちらのLNP2が、アンプとして優れているかではなく、
オーディオ機器を通して、音楽を聴く、聴き手の姿勢の違いである。

音楽と聴き手の間に、オーディオ機器が存在(介在)する。
その存在を積極的に認めるか、できるだけ音楽の後ろに回ってほしいと願うのか、
そういう違いではないだろうか、どちらのLNP2を採るか、というのは。

そして、LNP2Lを通して足されるものに、黒田先生は、
マーク・レヴィンソンの過剰な自意識を感じとられたのではないのか。

足されるものは、聴き手によって、演出になることもあるし、邪魔なものになる。

瀬川先生は、LNP2Lによって足されるものを、積極的に評価されていたのだろう。
だからこそ、アンプをひとつ余計に通るにも関わらず、バッファーアンプを搭載することに、
積極的な美(魅力)を感じとられた、と思っている。

だからML7Lが登場したとき、
黒田先生は、積極的に認められ導入されている。
瀬川先生は、ML7Lの良さは十分認めながらも、音楽を聴いて感じるワクワクドキドキが薄れている、
そんなことを書かれていたのを思い出す。

JBLの2405とピラミッドのT1Hの試聴記も思い出してほしい。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その11)

岡先生は、バウエン製もジュールのLNP2を購入されたあとに、
マークレビンソン自社製モジュールのLNP2との比較も行なわれたうえで、
バウエン製モジュールのLNP2を、高く評価されていた。

瀬川先生は、バウエン製モジュールのLNP2は聴かれていないはず。
もし聴かれていたとしても、自社製モジュールのLNP2をとられたであろう。

なぜそうなるのか。
おふたりの、オーディオを通しての、音楽の聴き方の違いから、であろう。

70年代のステレオサウンドの別冊で、
岡先生、瀬川先生、黒田先生の鼎談が掲載されている。
読んでいただければわかるが、岡先生と黒田先生の意見に対し、
瀬川先生の意見が、まるっきりかみ合わない。
これはレコード音楽の聴き方の相違から生れてくるもので、
相手を理解していないからでは、決してない。だから、ひじょうに面白い鼎談になっている。

この時期(70年代後半)に、黒田先生が、2つのLNP2を聴かれたら、
おそらく岡先生と同じようにバウエン製モジュールのほうを選ばれたかもしれない。

1980年にML7Lが登場したときに、黒田先生がステレオサウンドに書かれた文章に、興味深いことが出てくる。

ML7L以前のマークレビンソンのアンプには、己の姿を鏡に写して、それに見とれているような、
そんな印象を受けていた。ML7Lには、そういうところがなくなっている。
そんな意味合いのことだった。

黒田先生が言われる、ML7L以前のアンプは、LNP2とJC2 (ML1L) のことであり、
LNP2は、自社製モジュールの搭載のもの。

黒田先生は、世紀末はナルシシズムの時代とも書かれていた。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その10)

“straight wire with gain” を目指したアンプは、
味も風味もない、素っ気無い音の代名詞のようにいわれた時期があった。
蒸留水のような音、とも言われていた。

この「蒸留水のような」という表現は、あきらかに誤解を生み易い。
たしかに蒸留水は、味気のない水で、ちっともおいしくはない。

けれど、もう一度、”straight wire with gain” をきっちりと捉えなおしてほしい。

もし完璧な “straight wire with gain” といえるアンプが存在していたとしよう。
このアンプに蒸留水を入力すれば、出力には蒸留水のまま、水量だけが変化して出てくる。
清冽な石清水を入れたら、やはり水量だけ変化して石清水が、成分はまったく変化せずに、
濁水ならば、浄水されることなく、そのまま濁水で出てくる。

石清水を入れても濁水でも、出てくるのが蒸留水であるのなら、
それはフィルターを通した水(音)であり、この手のアンプは、断じて “straight wire with gain” ではない。

蒸留水イコール無色透明なわけではない。

これから先、どんなに技術が進歩しようと、少なくとも私が生きている間には、
“straight wire with gain” を実現できるアンプは現われはしないだろう。

2台のLNP2(岡先生のLNP2とステレオサウンド常備のLNP2L)は、
内部のモジュールが違い、外部電源の仕様もまったく違う。
そのモジュールも、設計者が同じならばまだしも、かたやリチャード・S・バウエン、
もう片方はジョン・カールと、これもまた違う。
つまりまったく別物のアンプと捉えるべきだ。なのに外観がまったく同じ。
こんな例はおそらくLNP2が初めてだろうし、最後だろう。

どちらのLNP2を良しとするかは、聴き手次第であり、私は、迷うことなくLNP2Lをとる。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その9)

1970年代の半ばごろか後半か、アメリカのオーディオジャーナリストのジュリアン・ハーシュが、
理想のアンプの条件として、”straight wire with gain(増幅度をもったワイヤー)” と定義した。

いまではあまり見かけなくなり語られなくなったようだが、一時期はよく引き合いに出されていた。

ジュリアン・ハーシュが、どこからインスピレーションを得て、この言葉を思いついたのかは不明だが、
LNP2や、さらにシンプルな機能のJC2の登場が、多少は関係しているように思われる。

この “straight wire with gain” といっしょに語られていたのが、アンプの理想を蒸留水とした例えである。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その8)

別冊FM fanに瀬川先生が、マーク・レヴィンソンは、このまま、どこまでも音の純度を追求していくと、
狂ってしまうのではないか、という主旨のことを書かれていた。
実際には狂うことなく、むしろ熟練の経営者として面が強くなっていったようにも、私個人は感じているが……。

LNP2が出たころ、マーク・レヴィンソンはアンプの技術者でもあり、
LNP2の新モジュールは、当初はレヴィンソンの設計によるものだと言われていたし、
ほとんどの人がそう信じていた。もちろん私も信じ切っていた。

1984年にMLAS (Mark Levinson Audio Systems) を離れCelloを興したころ、
レヴィンソン自身が、「アンプの技術者ではなかった」と語っている。

彼がほんとうにアンプの技術者だったら、瀬川先生の心配が現実になったかもしれない。

ときどきバウエン製モジュール(UM201)と
マークレビンソン自社製モジュールLD2の音の違いについて聞かれることがある。

どちらが良いのか、どんな違いなのか……と。

バウエン製モジュールのLNP2は数が極端に少ないため、実際に聴いた人は少ないようだし、
私もステレオサウンドにいたから、幸運にも試聴の機会にめぐまれた。

岡先生所有のLNP2と、ステレオサウンド試聴室で使っていたLNP2Lとの比較である。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その7)

LNP2もJC2も外部電源になっている。
言うまでもなく、電源トランスからの漏洩フラックス、振動の影響を避け、SN比をできるかぎり高めるためである。
電源部が外部にあることで、アンプ内部のコンストラクションの自由度も増す。

ただメリットばかりではなく、デメリットもある。
最も問題なのは、電源部とアンプ本体を接ぐケーブルには、必ずインダクタンスが存在すること。

ケーブルが長ければ長いほどインダクタンスも大きくなり、外部電源の出力時には低かったインピーダンスも、
ケーブルを伝わってアンプに供給されるときには、高域のインピーダンスが上昇する。

これを防ぐには、極端にケーブルを短くすればいいが、これでは実用性がない。
もうひとつは、アンプ本体のコネクター部からNFBをかけれる手法だ。

型番がついた外部電源、PLS150ではまだ採用されていなかったが、
次のPLS153からはこの手法により、インピーダンスの上昇を抑えている。
そのためコネクターのピン数が増えている。

つまり外部電源とアンプ本体を接ぐケーブルがNFBループ内に含まれるため、
このケーブルを好き勝手に、他のケーブルと交換するのはやめたほうがいい。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その6)

ステレオサウンド 38号に掲載されている山中先生のリスニングルームには、
マランツの#7、ハドレーのModel 621、GASのテァドラがメインのコントロールアンプとして、
クワドエイトのLM6200R、JBLのSG520、マッキントッシュのC22とC28、
マランツの#1 (×2) +#6がサブのコントロールアンプとして、ラックに収められている。

プレーヤーにはEMTの930st、
オープンリールデッキにアンペックスのModel 300を使われることからもわかるように、
山中先生は、プロ用機器、コンシューマー機器というカテゴリーにとらわれることなく、
優れた、魅力あるオーディオ機器ならば、コレクションに加えられ、使いこなされていた。

そういう方だから、1974年にシュリロ貿易がサンプルとして入荷したLNP2を、
「プロまがいの作り方で、しかもプロ用に徹しているわけでもない……」と
酷評されたのは、むしろ当然だろう。

どこをそう感じられたのか。

テープ入出力端子とメインの出力端子のRCAジャックと並列に接いだだけのXLR端子がそうだろう。
LM6200が600Ωのバランス対応なのに、
LNP2は、ハイインピーダンス受けのアンバランス入力とローインピーダンスのアンバランス出力、
当時のプロ用機器で常識だったインピーダンス・マッチングには、何の配慮もない。

レヴィンソン自身が、市場に、自身が満足できるクォリティのミキサーが存在しないために作ったというのは、
75年から輸入元になったR.F.エンタープライゼスの謳い文句だが、
LNP2のブロックダイアグラムを見て、ミキサーから生れたコントロールアンプと言えるだろうか。

LNP2の型番からわかるように、LNP1というモデルが存在する。
このLNP1が、レヴィンソンによるミキサーだが、ブロックダイアグラムなどの資料がまったくないため、
詳細は不明。LM6200のようにバランス対応だったのか、それともアンバランスだったかも不明だ。

LNP2のインプットレベルヴォリュームとインプットアンプのゲイン切換えに、
ミキサー的と言えなくもないが、やはり中途半端なままだ。

ライン入力でも、接続する機器によって信号レベルが異る場合がある。
さらにフォノイコライザーアンプの信号レベルは、組み合せるカートリッジ、
それがMC型ならば、ヘッドアンプのゲインや昇圧トランスの昇圧比によって、
ライン入力とかなりレベル差が生じることもある。

プロ用機器として、ミキサーとして、本来開発されたものであるならば、
例えばリアパネルの各入力(フォノ入力は除く)端子に、
それぞれ独立した、しかも左右独立のレベルコントロールを設け、
入力信号を切り換えても、再生レベルが変化することがないように調整できるようにしておくべきだ。
プロの録音現場で使われていたLM6200を、もう一度見てほしい。

もちろん、コンシューマー用コントロールアンプには、こういうことは私だって求めない。
だがプロ用機器となると話は別だ。

それから外部電源という形態もそうだろう。
SN比を高めるための手段とはいえ、それはコンシューマー機器で許されることであって、
プロ用機器では、こんなことは、まずあり得ない。

つけ加えておく。
LNP2に対し厳しいことを書いているけれど、LNP2にずっと憧れてきたし、
いまでも、一度は自分のモノとして使いたい、と心のどこかで思ってもいる。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その5)

LNP2とほぼ同時期に、
アメリカのQUADEIGHT(クワドエイト)からLM6200Rというコントロールアンプが出ていた。

LM6200は、ポータブル用ミキサーで、6チャンネルの入力、それぞれにレベルコントロールをもつ。
末尾にRのつくモデルは、1、2チャンネルにRIAAイコライザーカードを搭載したモデルである。
LM6200Rだと、ライン入力はのこり4チャンネル、つまり左右で2チャンネル必要だから、ライン入力は2系統となる。

LM6200Rと便宜上呼んでいるが、正確にはミキサー部がLM6200であり、VUメーター部はVU6200で、
独立した筐体をトランクケースにラックマウントしている。
ライン入力がさらに必要な場合には、LM6200を足すことで対応できる。

入出力はXLR端子を使い、プロ用機器という性格上、すべてバランス対応なのは言うまでもない。

質実剛健なつくりのプロ用機器として、LM6200Rは、岩崎先生が愛用されていたし、
山中先生も所有されていた。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その4)

LNP2のブロックダイアグラムは、多くのコントロールアンプの構成とは、やや異る。

オプションのバッファーアンプを装備しない標準状態では、
カートリッジの信号は、フォノプリアンプ、インプットアンプ、アウトプットアンプを通る。
AUX、チューナーなどのライン入力は、インプットアンプ、アウトプットアンプを、
テープ関係の信号は、ライン入力と同じだが、
テープセレクタースイッチを使えば、インプットアンプをパスでき、アウトプットアンプのみを通って出力される。

リアパネルには、テープ入出力とメイン出力端子は、XLRコネクターが併設されているが、
パランス入出力ではなく、いずれもアンバランス入出力である。

LNP2はメイン(アウトプット)ヴォリュームの他に、
インプットアンプの前にインプットレベルヴォリュームが左右独立で設けられ、
さらにインプットアンプのNFB量を切り換えることで、この段のゲインを調整できる。

VUメーターに表示されるのは、このインプットアンプの出力レベルである。

ここのゲインとインプットレベルヴォリュームの設定が、
組み合わせるパワーアンプの感度やスピーカーの能率によっては、意外に神経質な面をのぞかせることもある。

初期のLNP2はゲイン切換えが0〜+20dBまでだったのが、末尾にLがつくタイプからは、+40dBとなり、
ゲイン切換えにともなう、つまりNFB量の変化によって音の抑揚や音場感も変ってくる。

メインヴォリュームは、トーンコントロールの役割ももつアウトプットアンプの前にある。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その3)

LNP2用のモジュールの設計には、ひとつの大きな制約があった。消費電力である。

LNP2には片チャンネル当り6つの信号用モジュールとVUメーター駆動用モジュールが1つ、
左右両チャンネルで8つのモジュールを搭載している。
さらに、バッファーアンプ用にモジュールを追加できるように、最初からそうなっている。

瀬川先生は、信号が通過するアンプモジュールは増えることになるが、
バッファーアンプを追加したほうが、音の表情の幅と深さが増すと書かれていた。
実際、瀬川先生が愛用されていたLNP2は、バッファー用とモジュールが追加されていたし、
ステレオサウンドに常備されていたLNP2も、そうだった。

1977年に、入出力コネクターが、一般的なRCAジャックからCAMAC規格のLEMOコネクターに変更されたとき、
外付け電源も大きく変更され、電源にもPLS150という型番がつけられるようになった。
それまでは、そんなに立派な仕様ではなく、汎用性といった感じのモノが付いていた。

もともとの付属電源の容量が、実はそれほど余裕があるわけでなく、
しかもLNP2は最大10個のモジュールを搭載する。
OPアンプ中心の回路構成で消費電力も低かったバウエン製モジュールでは、
それでも問題は生じなかった。

けれど、74年に登場した、ジョン・カール設計のJC2搭載のモジュールを、
そのままLNP2には消費電力の面で、搭載は無理だった。

ディスクリート構成のモジュールを、
OPアンプ中心のバウエン製モジュールと変わらぬ消費電力で実現しなければならない。
このことに、苦労させられたと、ジョン・カールは語ってくれた。

そのことを裏づけるかのように、JC2のモジュールには、Class Aという表記がある。
LNP2のモジュールには、そういう表記はない。