Archive for category JBL

Date: 1月 13th, 2015
Cate: 4343, JBL

40年目の4343(その1)

JBLの4343は1976年秋に登場した。
来年(2016年)は、40年目である。

1976年中に4343を手にした人はそう多くはないだろうが、
円高ドル安のおかげで4343は価格は下っていった。
それに反比例するように、ステレオサウンド誌上に4343は毎号のように登場し、
特集記事も組まれていった。
ペアで百万円をこえるスピーカーシステムとしては、驚異的な本数が売れていった。

いまも4343を鳴らしている、持っている人はいる。
新品で購入した人ならば、長い人で40年、短い人でも30年以上経っている。
しかもウーファーの2231A(2231H)とミッドバスの2121(2121H)のエッジはウレタンだから、
エッジの補修は誰もがやられている。

それ以外にもリペアは必要となる。
ネットワークの部品も交換されていると思うし、スピーカー端子もバネがダメになることがある。
アルニコマグネットは衝撃に弱いため、減磁している可能性もある。

どんなに大切に使って(鳴らして)いても、リペアをせずにすむわけではない。

これから先もリペアしていくのか、それとも……。

リペア(repair)は、修理する、修繕する、回復する、取り戻す、といった意味をもつ動詞。
リペアと同じように使われる言葉にレストア(restore)がある。
元の状態に戻す、という意味の動詞である。
このふたつと同じように”re”がつく言葉に、リバース(rebirth)、リボーン(reborn)がある。
名詞と形容詞だ。

Date: 1月 12th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その3)

JBLのコンプレッションドライバー2441は、日本の折り紙からヒントを得た新型のエッジの採用で、
ダイアフラムだけの違いにもかかわらず、2440よりも高域特性は格段に向上している。

2440(375)はエッジの共振を利用していたため、10kHz以上の再生は無理だったが、
2441(376)ではカタログスペックでも18kHzまでとなっている。
周波数特性のグラフを比較してみても、2440との差は歴然である。

ならば5kHzといわず、10kHz、さらにもっと上の周波数まで2441+2397に受け持たせることもできる。
けれど2445J+2397の指向特性のグラフでは、10kHz、15kHzでの特性は八つ手状になっているのが確認できる。

ときどきJBLが4350、4341で4ウェイにしたのは、最大音圧を高めるためだと勘違いの発言をしている人がいる。
確かに帯域分割の数を増やせば個々のユニットへの負担は軽減される。
けれどJBLが、スタジオモニターとして4ウェイを採用したのは指向特性の全体行きにおける均一化のためである。
これは4350の英文の資料を読まなくとも、スピーカーシステムの問題点を考えればわかることである。

指向特性の均一化ということでいえば2441+2397は10kHzまでは無理ということになる。
2445J+2397のグラフでは5kHZの特性も載っていた。こちらは良好である。

そうなると40万の法則、指向特性の均一化、630Hz近辺でのクロスオーバー、
これらにD130と2441+2397の組合せはぴったりと合致する。
しかもどちらも能率が高い。
80Hzから5kHzは2ウェイシステムとしても、ナローレンジということになる。

だがこれ以上強力なミッドバスとミッドハイの組合せは他にない、ともいえる。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その2)

私は瀬川先生の、フルレンジから始める4ウェイシステム・プランが気になっていた。
自分でやることはなかったけれど、スピーカーシステムについて考える時に、思い出す。

瀬川先生の4ウェイシステム・プランは、JBLの4350、4341が登場する前に発表されていた。
4350、4341のユニット構成、クロスオーバー周波数の設定など、共通するところがある。
そのせいもあって私にとっての4ウェイとは、まずこれらの4ウェイがベースとなっている。

もちろん4ウェイといっても考え方はメーカーによって違うところもあり、
ユニット構成、クロスオーバー周波数の設定からも、それはある程度読みとれる。

4ウェイをどう捉え考えるのか。
2ウェイの最低域と最高域をのばすために、トゥイーターとウーファーを加えて4ウェイとする。
こういう考え方もある。

この場合、忘れてはならないのは40万の法則である。
つまり40万の法則に沿う2ウェイをベースとしてスタートしたい。
となると、この2ウェイのクロスオーバー周波数は40万の平方根である632.45Hz近辺にしたい。
下限と上限の周波数を掛け合せた値が40万となるようにする。

具体的に80Hzから5kHzの2ウェイシステムで、クロスオーバー周波数は630Hz〜650Hzあたりである。
そして指向特性が、この帯域において均一であること。
この条件に、D130と2441+2397がぴったりくる。

2397のカタログには推奨クロスオーバー周波数は800Hzとなっているが、
家庭での使用音圧であれば500Hzのクロスオーバーでも問題のないことは、
ステレオサウンドのバックナンバーでも実験されているし、問題なく鳴らせる。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: D130, JBL

ミッドバスとしてのD130(その1)

1997年にでたステレオサウンド別冊「いまだからフルレンジ1939-1997」。
この本で井上先生はJBLのE130を、
マルチウェイシステムのミッドバス帯域(100〜500Hz近辺)用として使うのにも最適だ、と書かれている。

15インチ口径のミッドバス。
組み合わせるウーファーをどうするのか。
E130をミッドバスと書かれているということは、4ウェイ前提だったのであろう。
とするとミッドハイはJBLの2インチ・スロートのコンプレッションドライバーをもってきて、
JBLのトゥイーター2405、もしくは他社製のスーパートゥイーターということになる。

そうとうに大がかりなシステムになる。
だから「いまだからフルレンジ1939-1997」を読んでも、
E130ミッドバスのシステムについて゛あれこれ考えることはしなかった。

けれどいまはちょっと違ってきている。
JBLのD130がある。

D130をソロで鳴らしていると、この類稀なユニットの良さは、たしかにッドバス帯域にある。
フルレンジとして鳴らすのも楽しい。
LE175DLHとの2ウェイもいい。
私は試していないが、075との2ウェイもいい、と思う。

けれどいまは2441と2397の組合せもある。
この組合せの存在が、井上先生のE130ミッドバスの4ウェイシステムを思い出させる。

Date: 12月 2nd, 2014
Cate: JBL, 型番

JBLの型番

JBLのプロフェッショナル用スピーカーユニットの型番は四桁の数字。
2100シリーズがフルレンジユニット、2200シリーズがウーファー、
2300シリーズがホーン、2400シリーズがコンプレッションドライバーが基本となっている。

ミッドバス用のコーン型ユニットは2121、2122という型番だから、
ウーファーのようでもあるが、型番からはフルレンジということになる。
実際はウーファーに分類されるけれど。

数字の順序からすればフルレンジ、ウーファー、ホーン、コンプレッションドライバーとなっている。
ということはJBLの考え方としては、ホーンとコンプレッションドライバーの組合せにおいては、
まずホーンを選べ、ということなのではないか、と型番をみていると思えてくる。

フルレンジもウーファーもスピーカーユニットであり、音を発する。
コンプレッションドライバーもそうだ。
ホーンは違う。
なのに型番的にはウーファーとコンプレッションドライバーのあいだにいる。

ホーンとコンプレッションドライバーの組合せでコンプレッションドライバーを中心に考えるのであれば、
型番のつけ方としては2300シリーズがコンプレッションドライバーのほうがすっきりする。
けれど実際は2300シリーズはホーンの型番である。

誰がどういう意図で型番をつけていたのかはわからない。
けれど2300シリーズをホーンとしたのは、なんらかの意図があったのではないだろうか。

どの程度の空間にどういう指向特性で音を放射するのか。
まずこのことを決めた上でホーンを選び、次にコンプレッションドライバーを選べ、ということではないのか。

Date: 11月 9th, 2014
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(ウーファーについて・その4)

2231Aで採用されたアルミ製のリングを、
マスコントロールリング(Mass Control Ring)を呼ぶのは実に的確といえる。

仮に2230と2231AのMmsがほとんど同じだとしよう。
LE14AのMmsと口径の違いからすると、150gぐらいなのではないだろうか。

LE15A、そのプロ版にあたる2215のMmsはともに97g。
コーン紙そのものはほとんど同じものだとすれば、
2230におけるアクアプラスによる質量増加は約50gで、この50g分がコーン紙全面ほぼ均一に分布している。
2231Aではマスコントロールリングが50g分になり、
こちらはコーン紙とボイスコイルボビンとの接着面のところにある。

2230と2231Aでは質量の分布の仕方が大きく異る。分散と集中である。
このことは仮にMmsが同じだとしても実際の動作では大きく違ってきても不思議ではない。

”JBL 60th Anniversary”には、マスコントロールリングにより、
低域の下限周波数の拡張だけでなく、堅くて軽いコーン紙を使うことで中低域のレスポンスも向上する、とある。

そうだと考えられる。
それにコーン紙とボイスコイルボビンとの接着面にマスコントロールリングがあることで、
この部分の強度はなしにくらべて増しているはず。
とすればボイスコイル(およびボビン)のピストニックモーションがより精確に振動板に伝わる、ともいえる。

Mmsが150gというのは確かに重いと受けとめがちな値だが、
どこに重いと感じさせる部分があるのか(分散か集中か)によって、
重たい振動板イコール中域までレスポンスが伸びない、とは一概にはいえない。

ただマスコントロールリングはアルミ製であるため導電性がある。
このため実際の動作では電磁制動がこの部分で発生する。

もしJBLがマスコントロールリングを他の素材(導電性のないもの)にしていたら、
とどうしても考えてしまう。

Date: 11月 8th, 2014
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(ウーファーについて・その2)

2230はコーン紙の色からわかるようにアクアプラスが塗布されている。
アクアプラスは石灰を主成分としているときいたことがある。
はっきりとしたことはわからない。
しかも塗り方にノウハウがずいぶんあるようで、JBLのコーン紙の製造が日本でなされていたときも、
アクアプラスの塗布はアメリカで行っていた。

私は2230を搭載した4350は聴いたことはあるけれど、いい音で鳴っていたわけではなかった。
だからなんともいえないのだが、4350がいい音で鳴っているのを聴いたことのある知人によれば、
4350A(2231A搭載)よりも4350の方が、低音の質感は良かった、らしい。

そうかもしれない。
4310、4311も白いコーン紙のウーファーだし、
4345も表からみれば黒いコーン紙だが、
18インチ・ウーファーの2245Hはコーン紙の裏側にアクアプラスが塗布されている。

にも関わらず2230から2231Aになっていったのか。
ステレオサウンド別冊”JBL 60th Anniversary”によれば、
250Hzという低めのクロスオーバー周波数は効果的であるアクアプラスも、
4331、4333のようにミッドバスを持たないシステムの場合、クロスオーバー周波数は高くなる。
4331、4333は800Hzとなっている。

そうなるとアクアプラス塗布のウーファーは振動板が重くなりすぎて、
さらにアクアプラスは一種のダンプ剤でもあるため、中低域より上の帯域でレスポンスが波打つ、
感度の低下が明らかになるから、とある。

2230のmmsがどのくらいなのかはわからない。
ただアクアプラス塗布の14インチ・ウーファーのLE14Aは140gであるから、
2230は140gよりも重たいことだけははっきりしている。

Date: 11月 7th, 2014
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(ウーファーについて・その1)

“THIELE SMALL LOW FREQUENCY DRIVER PARAMETERS AND DEFINITIONS”というPDFがある。
JBLのウーファー、フルレンジユニットのティール・スモール・パラメータの一覧表である。

14のパラメータが載っている。
その中に”Mms”がある。Effective moving massのことで、単位はgrams。
振動板の実効質量である。

いくつかのウーファー、フルレンジのMmsを書き出してみる。
LE8Tは16g、D130は60g、130Aは70g、2202Aは50g、
2220Aは70g、2231Aは151g、2235Hは155g、LE15Aは97g。
LE8Tは8インチのフルレンジユニット、2202Aは12インチのウーファー、
あとは15インチ・ウーファーもしくはフルレンジである。
2231Aは4343、4350A、4331、4333などに搭載されている。
2235Hは4344のウーファーである。

2231Aと2235Hは重い。
同じ15インチであっても2220Aは半分以下。

ちなみに18インチのウーファーは2240Hが164g、2245Hが185gで、
2245Hは4345のウーファーでもある。

なぜ2231A、2235Hは重いのかというと、マスコントロールリングを搭載しているからだ。
コーン紙とボイスコイルボビンとの接着面のところにアルミ製のリングを装着している。
エド・メイの考案である。
これにより実効質量が増し、f0は低くなる。低域の下限周波数を拡張できる。

エド・メイは4350の搭載されていた白いウーファー、2230も開発している。
4350に2231Aが搭載されたのが4350Aとなる。

“THIELE SMALL LOW FREQUENCY DRIVER PARAMETERS AND DEFINITIONS”に2230は載っていない。

Date: 6月 18th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor, 型番

JBL Studio Monitor(型番について・続余談)

リニアテクノロジーは、LTspiceという回路シミュレーターを公開している。
この回路シミュレーターは無料で使える。
これまではMac用はなかったけれど、昨年秋に公開されたことを先月に知った。
さっそくダウンロードした。

このときにリニアテクノロジーのtwitterのアカウントもフォローした。
昨日のツイートに、LTC4320と書いてあった。

4320という型番の製品がリニアテクノロジーにあるのか、と思って、
他にどんな型番の製品があるのか検索してみたら、LT4320というのもあった。

こちらはMOS-FETを使って整流回路を構成するパーツで、
資料には理想ブリッジダイオードコントローラーとある。
これはそのままオーディオにも使える製品である。
それに4320という型番がついているのだ。

他愛のないことだけど、これだけのことで使ってみたい気にさせてくれる。

Date: 6月 15th, 2014
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その29)

ガリバーが小人の国のオーケストラを聴いている──、
こんなイメージに必要なのは、自分(ガリバー)が小人よりも大きいと意識できるかどうかであり、
実際に小人のオーケストラを聴いたことがあるわけではないが、
それでも想像できるのは目、耳と同じ高さに小人のオーケストラがあるよりも、
やはり下に位置した方が、より自分の大きさ(相手の小ささ)を意識できるのではないのか。

20代のある時期、私もLS3/5Aを鳴らしていたことがある。
あくまでもサブスピーカーとしてだったから、専用スタンドを用意することはなかった。
聴きたくなったら、何かの台にのせて鳴らしていた。
その台は、LS3/5A用として売られていたスピーカースタンドよりも低いもので、
LS3/5Aを斜め上から見下ろす感じで聴いていた。

そのせいか、いまでも小型スピーカーをごくひっそりとした音量で鳴らす時は、
こんなふうにして聴くことが多い。

ここでもう一度瀬川先生の「いま、いい音のアンプがほしい」の冒頭を読み返してみよう。
こうある。
     *
このゴミゴミした街が、それを全体としてみればどことなくやはりこの街自体のひとつの色に統一されて、いわば不協和音で作られた交響曲のような魅力をさえ感じる。そうした全体を感じながら、再び私の双眼鏡は、目についた何かを拡大し、ディテールを発見しにゆく。
     *
全体を感じながら、目についた何かを拡大し、ディテールを発見しにゆく、とある。
この聴き方こそ、瀬川先生の聴き方ななのかもしれない。

何かを拡大する──、そういう聴き方に向いているといえるのは、JBLだったといえないだろうか。

Date: 6月 14th, 2014
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(続2397の匂い)

おそらく20年以上前のテレビ番組だったと記憶している。
ストラディヴァリウスの音色の秘密を探る、といった番組だった。

同じテーマの番組は、これまでもいくつかつくられているようで、
ストラディヴァリウスの番組をみた、という人と話しても、必ずしも同じ番組とは限らなかったりする。

私がみたのは、ストラディヴァリウスの音色の秘密を探っている各国の人たちが登場していた。
それぞれに独自の理論(のような)があった。

その中のひとりは、ストラディヴァリウスの音の秘密はニスだといわれているけれど、
実はボディに使われている木にあって、あるものが含浸されている、ということだった。
現在、同じものを含浸するとすれば、こうするのがいい、ということで彼が実際にやってみせていたのは、
木を防虫剤で煮込む、というものだった。

そうやってつくられたヴァイオリンが、どれだけストラディヴァリウスに近いのかははっきりとしないけれど、
音は防虫剤を含浸されるのとさせないとでははっきりと違う、とのこと。

ということはJBLのエンクロージュアや木製ホーンに使用されている防虫剤は、
どの程度使われているのか、それにどういう防虫剤なのかもはっきりとはしないけれど、
音に少なからぬ影響を与えている可能性は考えられる。

ストラディヴァリウスの再現を目指している彼か使っている防虫剤と、
JBLが使っていた防虫剤、
成分はどの程度似通っていて違っているのか。

そんなことを考えていた日があったことを思い出した。

Date: 6月 13th, 2014
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その28)

音楽之友社が毎年出していた「ステレオのすべて」。
瀬川先生は、山中先生のリスニングルームに行きエレクトロボイスのパトリシアンを見るたびに、
横に倒したくなる──、そんなことを発言されている。

何もパトリシアンを横置きにしたほうが音が良くなる、という理由ではなく、
瀬川先生はとにかく背の高いスピーカーがダメだった。嫌われていた。
ただそれだけの理由でパトリシアンを横にしたくなる、ということだった。

その点、パラゴンは問題ない。

それは音に関してではなく、あくまで見たイメージの問題としてなのだが、
なぜ瀬川先生は背の高いスピーカーがダメだったのか。

いまとなっては、その理由はわからない。
ただ、瀬川先生が比較的小音量で聴かれることも、無関係ではないように思う。

ガリバーが小人の国のオーケストラを聴く。
このときオーケストラはガリバーの耳と同じ高さにあるのではなく、
下に位置するイメージを、私は描く。

瀬川先生が、小人の国のオーケストラ……、という発言をされたとき、
小人の国のオーケストラと聴き手の高さ方面の位置関係は、どう描かれていたのか。

瀬川先生が背の高いスピーカーを嫌われていることが、自然と結びついてくる。
小人の国のオーケストラを、斜め上から聴いている──、
私には、瀬川先生もそうだったのではないか、と思えてならない。

「いま、いい音のアンプがほしい」の書き出し。
目黒のマンションの十階からの眺め。
ここを読んでいるからなおさらである。

Date: 6月 13th, 2014
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・2440ではなく2420の理由)

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その3)で、
なぜ2440ではなく2420なのか、と書いた。

いくつか考えられる理由はある。
最大の理由は音のはずだが、ハークネスの上に2441+2397をのせていて気づくことがある。
見た目のおさまりに関することだ。

2440(2441)は直径17.8cmある。
これに2397を取りつける。そしてエンクロージュアの天板のうえに置いてみる。

そのままではホーン側が下を向く。
ホーンが水平になるようにホーンに下に何かをかます。

2397の外形寸法をみると高さは9.5cmとなっている。
これはスロートアダプターを取りつける部分の高さであり、
2397のホーン開口部の高さは約7cmである。

ということは2441の外径17.8cnから2397のホーン開口部の高さを引いて2分割した値が、
2397とエンクロージュア天板との間にできるスキマということになる。

これが意外に気になる。
空きすぎているからだ。

このスキマができることは最初からわかっていたけれど、実際に置いてみると、
予想以上に空いている。

これが2420ならば14.6cmだから、スキマも少し狭まる。
実際に2420にしてみたわけではないからなんともいかないけど、
ここでの数cmの違いは、大きく違ってくるはずだ。

もしかすると瀬川先生も、この点が気になっていたんではないだろうか。
そんなことを思うほど、私はこのスキマが気になっている。

Date: 6月 10th, 2014
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その27)

ビッグバンド系のレコードではそれほど大きな音量にしない、と発言されている岩崎先生も、
以前は、かなりの大音量でビッグバンドのレコードも聴いていた、とある。

油井正一氏がこんなことを発言されている。
     *
大きな音量で聴くカウント・ベイシーがまた、なんともいえずよかった。それでぼくは、実際に聴いたらどんなに大きなボリュームでやるんだろうと思って出かけたら、意外にも想像してた音量の三分の一ぐらい。そのときぼくは2階のうしろのほうの席で聴いていたんだけど、これはいけないと思って1階におりて前のほうに行ったら、だいたい自分の部屋で聴いているくらいのボリュームになったんです。これにはびっくりしましたね。
     *
1960年代はじめのころの話である。
これを受けて岩崎先生はデューク・エリントン楽団で感じた、と言われている。
     *
実際のコンサートで聴いてみると、きわめてさわやかで、スカッとしていて、音量感なんてないんですね。一生懸命にやっていても、とても静かなんですよ。それでぼくは、同じジャズといっても、バンド・サウンドというものは、全体の音としては決してそんなに大きくないんだということを知ったわけです。
だからジャズというものは、ある程度音を大きくして聴く必要があるとは思いますが、楽団や演奏スタイルの性格によって、そこに時国漢の差があるということですね。
     *
この発言の数ヵ月後にパラゴンを手に入れられているわけだから、
ピアノ・ソロ、ピアノ・トリオといった小編成はかなりの音量で聴かれていたのだろうが、
ビッグバンドとなると、意外にも大きな音量ではなかったようにも考えられる。

岩崎先生もパラゴンの反射板をスクリーンとして捉えられていたのだろうか。

Date: 6月 9th, 2014
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その26)

私の偏見かもしれないが、日本のオーディオマニアには、
パラゴンは大音量で聴いてこそ映えるスピーカーだ、と思っている人が少なくない、と思う。

それも仕方ないことかもしれない。
1970年代、無線と実験には見開き2ページで、毎号、全国のジャズ喫茶を紹介するページがあった。
私が無線と実験を読みはじめたのは、1977年ごろだから、この記事をそれほど多く見ていたわけではないが、
それでもパラゴンを使っていることは多い、という印象は持っていた。

そして日本では岩崎先生がパラゴンの使い手・鳴らし手として知られていた。
岩崎先生は大音量ということで知られていた。
パラゴンは、岩崎先生のメインスピーカーのひとつだから、
誰もがパラゴンは大音量で鳴らされていた、と思っていても不思議ではない。

私もそう思っていたひとりだった。

だが「コンポーネントステレオの世界 ’75」に掲載された、
岩崎千明、黒田恭一、油井正一の三氏による「オーディオシステムにおける音の音楽的意味あいをさぐる」で、
岩崎先生の、こんな発言がある。
     *
ジャズの場合でも、ビッグ・バンド系のものはクラシックと同じようなことがいえると思いますね。だからぼくは、おかしな話しなんだけど人数が多いときはそれほど音量を大きくしなくて、人数が少なくなければなるほど音量は大きくなるんです(笑い)。
     *
岩崎先生がパラゴンを導入されたのは1975年夏のはずだから、
この鼎談の時は、まだである。